特許出願から特許取得に必要な費用には、大きく分けて次の2種類があります。
- 特許庁に支払う費用(特許庁費用)
- 弁理士に支払う費用(弁理士費用)
今回は上記の費用について、それぞれどのようなものなのか詳しく解説していきましょう。
特許庁に支払う「特許庁費用」とは
特許庁費用は、特許庁に納める費用です。具体的な費用については法律で定められており、印紙での支払いとなります。
特許庁費用は次の3つの費用に分類されます。
- 出願時
- 審査請求時
- 特許料
それぞれについてもう少し詳しく解説しましょう。別記事の特許出願時の手順を参考にして頂けると分かりやすいと思います。
質問者 特許出願ってすごく難しそうですよね。 誰でも出願できるものですか? 酒谷弁理士 そうですね。特許出願自体は誰でもできますよ。 ただ、簡単かと言われると、簡単ではないかもしれませんね。 […]
出願時に特許庁に支払う費用
特許出願時には特許庁費用として、印紙代がかかります。
審査請求時に特許庁に支払う費用
特許取得には、特許出願後に審査請求をする必要があります。審査請求を行うことによってはじめて審査が開始されることになりますが、審査請求をする際にも印紙代を支払わなければなりません。
また、国際出願に基づき日本国に特許出願した場合には、国際調査報告により審査負担が軽減されます。国際出願についての詳細は下記の記事を参考にしてください。
質問者 聞いてください!今までは日本でしか販売していなかった製品を海外でも発売することになりました! 酒谷弁理士 海外での販売おめでとうございます! 質問者 そこで質問なのですが、日本で[…]
また、特定登録調査機関が交付する調査報告を提示して審査請求を行うこともできますが、その場合についても手数料が減額されます。
特許料として特許庁に支払う費用
特許査定が通知された際に、特許査定の発送日から30日以内に第1年~第3年までの3年分の特許料を設定登録料として支払うことによって、特許が登録されます。
以後、第4年以後の各年分の特許料は、前年以前に納付しなければなりません。支払わなければならない特許料については、以下のように決められています。
- 第1年から第3年までが共通の計算方法で計算される同じ額
- 第4年から第6年までが共通の計算方法で計算される同じ額
- 第7年から第9年までが共通の計算方法で計算される同じ額
- 第10年から第25年までが共通の計算方法で計算される同じ額
下の表は2021年2月18日時点での特許料についてまとめたものです。表を見るとわかるように、登録からの年数が経つに従って1年後毎に収める特許料が増額されることになります。
項目 | 金額 | |
第1年から第3年まで | 毎年2,100円に1請求項につき | 200円を加えた額 |
第4年から第6年まで | 毎年6,400円に1請求項につき | 500 円を加えた額 |
第7年から第9年まで | 毎年19,300円に1請求項につき | 1,500円を加えた額 |
第10年から第25年まで | 毎年55,400円に1請求項につき | 4,300円を加えた額 |
但し、第21年から第25年については、延長登録出願があった場合のみとなります。
では、続いて代理人に支払う費用について解説していきましょう。
弁理士費用!料金に明確な決まりはない?
特許出願に関する書類の作成や手続きは専門家でない限り、個人が行うことはありません。通常は、弁理士に特許出願から特許取得までを依頼することになります。ですから、代理人となる特許業務法人または弁理士に対する手数料として費用が発生することになります。これを弁理士費用と言います。
弁理士費用は、特許庁費用のように法律で定められた金額というものはありません。ですから、事務所や弁理士によって料金が異なります。また、同じ事務所や弁理士に依頼する場合であっても、発明によって書類の量や書類の準備に掛かった時間なども違ってくるので、出願毎に費用も変動します。
弁理士費用の場合も、特許庁費用と同様に以下のようなタイミング毎に支払うことが多くなっています。
- 出願時
- 審査請求時
- 意見書/補正書提出時
- 登録時
弁理士を選ぶ際の注意点!
弁理士費用に関する注意点はありますか?
前述したとおり、特許取得には特許庁費用と弁理士費用があるということはわかって頂けたと思います。ただし、一般的に特許取得に掛かる費用としては弁理士費用の方が高くなるので、その点は注意が必要です。
また、代理人を依頼する事務所や弁理士によって、費用の科目や料金が異なります。特に、ホームページなどでかなり安い金額を提示している場合には注意が必要です。弁理士費用についてかなり安い金額を提示している場合、一部のサービスが提供されなかったり、一部の費用しか表示していなかったり、出願時の手数料を安くする代わりに他の手数料が割高に設定されていたりすることもありえます。
ですから、代理人に依頼する時には、出願時の手数料だけではなく、意見書/補正書提出時、登録時の費用なども確認しておくことをおすすめします。最終的に特許が登録される時には総額でいくらかかるのかというのが重要です。但し、通常、請求項の数、書類のページ数、図面の数によって料金が変動しますが、発明によって書類の量が変わってくるので、単純に1つの出願で総額、固定額でいくらということが難しいです。
昨今、スタートアップ・ベンチャー企業の知財デューデリジェンスをした結果、
「 その企業の特許がビジネスを保護するのに適正ではなく、
せっかく苦労して開発した発明が模倣し放題で、
事業の競争優位性を維持するのに全く役に立っていない! 」
といったケースが増えています。
特許出願について何も考えずに、知り合い(例えば、税理士や弁護士)に、
弁理士を紹介してもらったということが、多々あるかと思います。
弁理士であれば、特許を取得するだけならそんなに難しいことではありません。しかし、特許が取得できたとしても、ビジネスを保護するのに適正ではなく、意味のない特許を取得してしまったことが後から発覚し、問題になるケースが増えています。
発明の本質をとらえて他社の追従を許さないように特許を戦略的に取得してくれる弁理士は、非常に少数ですが存在しますので、そのような弁理士に初期に相談することが大切です。
ですから、ビジネスの競争力を維持することに貢献する特許を取得してくれる弁理士を探すことをおすすめします。