特許庁費用の軽減措置!外国出願でも助成が受けられる?

質問者
中小企業が特許を取得する時、特許庁費用が少し安くなるって聞いたのですが、本当ですか?
酒谷弁理士
そうですね、特許庁費用に関しては軽減措置があるので受けられる可能性はありますよ!

今回は、特許を取得する時に支払わなければならない特許庁費用の軽減措置について詳しく解説していきましょう。

特許庁費用に関してはこちらの記事で詳しく解説しているので、特許庁費用が何かということを知りたい場合は下記リンクをご覧ください。

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特許出願の弁理士を選ぶ際に費用以外で注意することは?

日本の特許庁に収める費用の軽減!費用が半分に?

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質問者
特許庁費用の軽減措置にはどのようなものがあるのでしょう?
酒谷弁理士

特許庁費用には、

  • 中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした軽減措置
  • 中小企業(会社及び個人事業主)を対象とした軽減措置
  • 各市町村の助成

という3種類の軽減措置があります。詳しく解説しましょう。

中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした軽減措置を利用しよう!

下記に示すいずれかの条件に該当する場合は、対象費用が1/3 に軽減されます。条件としては下記の通りです。

対象者の条件

  • a. 小規模の個人事業主(従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下))
  • b. 事業開始後10年未満の個人事業主
  • c. 小規模企業(法人)(従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下))
  • d. 設立後10 年未満で資本金3 億円以下の法人

尚、上記の「c」及び「d」については、支配法人のいる場合は除かれるので注意してください。従業員が20人以下や10年未満の事業主は優遇されるので、どんどん特許出願して頂きたいものです。

では、気になる費用について見ていきましょう。軽減される対象費用は以下のものです。

対象費用

  • 審査請求料軽減
  • 特許料(第1年分から第10 年分)
  • 国際出願(日本語でされたものに限る)の調査手数料・送付手数料
  • 国際出願(日本語でされたものに限る)の予備審査手数料

*1 特許庁ホームページ参照

質問者
中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした軽減措置を利用できれば、特許庁費用が3分の1に軽減されます!

中小企業(会社及び個人事業主)を対象とした軽減措置を利用しよう!

上記のa~dに該当しない場合であっても、以下の対象者の条件に該当する場合、以下の対象費用が1/2 に軽減されます。

対象者の条件

  • 中小企業(会社)の場合
    (a)所定の「従業員数要件」又は「資本金額要件」*2 のいずれかを満たしている会社であること、及び(b)大企業(中小企業以外の法人)に支配されていないこと
    です。
  • 中小企業(個人事業主)の場合
    所定の「従業員数要件」*3 を満たしている個人事業主であることです。

*2 中小企業(会社)を対象とした減免措置について参照
*3 中小企業(個人事業主)を対象とした減免措置について参照

軽減対象となる費用は次の通りです。

対象費用

  • 審査請求料軽減
  • 特許料(第1年分から第10 年分)
  • 国際出願(日本語でされたものに限る)の調査手数料・送付手数料
  • 国際出願(日本語でされたものに限る)の予備審査手数料
質問者
中小企業(会社及び個人事業主)を対象とした軽減措置が利用できれば、特許庁費用が2分の1に軽減されます!

各市町村の助成で特許出願の費用を節約しよう!

各市町村でも特許出願の費用を助成する制度があるので、積極的に利用されることをおすすめします。助成内容については各市町村によって違うので、詳細については最寄りの市町村の役所で確認してください。

質問者
特許庁費用には3種類の軽減措置があるんですね。自分が受けられるかどうか確認してみます!

外国出願費用にはJETRO等からの助成を利用しよう!

外国出願費用にはJETRO等からの助成を利用しよう!

質問者
特許庁費用が軽減される以外に何か費用を抑える方法は無いのでしょうか?
酒谷弁理士
外国に特許出願する場合は、助成が受けられる場合もありますよ。

外国での特許出願を検討している場合には、JETRO等が行っている中小企業等外国出願支援事業の利用をおすすめします。中小企業等外国出願支援事業では外国出願費用の助成を行っているので、新製品をグローバル展開する時には検討してみる価値はあるでしょう。

例えば、JETROで助成を利用するには以下の条件を満たせば良いので、条件は非常に緩いと言えます。

  • すでに日本国特許庁に行っている出願(PCT 出願を含む)と同一内容である
  • 外国特許庁への出願業務を依頼する国内弁理士等の協力が得られる
  • 助成を受けた後のフォローアップ調査に対して積極的に協力する

2016年度にはJETROの発表では個人事業主を含め約100社が助成対象になったということです。JETROの支援事業は毎年行われているので、JETROのホームページ等で動向を確認しておくとよいでしょう。

質問者
外国での特許出願する場合には、条件を満たせばJETROで助成を受けることができます。

米国の特許庁に収める費用の軽減

米国の特許庁に収める費用の軽減

質問者
ところで、米国に特許を出願する可能性があるのですが、米国の出願でも費用の軽減を受けられますか?
酒谷弁理士
小規模事業体の場合は米国特許商標庁に支払う費用が半分以下になる可能性があります。詳しく説明しましょう。

特許を出願する会社または個人が小規模事業体(small business concern)に該当する場合、米国特許商標庁(United States Patent Trademark Office:USPTO)に支払う下記の費用が50%割引されます。

  • 出願費用
  • 特許発行手数料
  • 年金等

また、以下に示す極小規模事業体(microentity)に該当する場合、米国特許商標庁に支払う下記の費用が75%割引されます。

  • 出願手数料
  • 継続審査請求手数料
  • 特許発行手数料
  • 年金等

金額の詳細は、米国特許商標庁のWEBページで確認することができます。

*5 https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/chusho_keigen.htm

質問者
75%って、凄くお得な感じがしますね。知らずに出願した場合は諦めるしか無いのでしょうか?
酒谷弁理士
実は、割引を受けずに通常の費用を支払った場合、支払いから3か月以内に差額の払い戻しを受けることができるんです!

また、特許は出願してから取得できるまでに時間が掛かるので、その間に会社が大きくなることだって考えられます。もしかすると、出願時には小規模事業体または極小規模事業体に該当していたのに、その後条件を満たさなくなったという場合もあるかもしれません。

しかし、途中で条件に該当しなくなった場合でも特許発行手数料の支払い前までは小規模事業体または極小規模事業体としての割引が適用されます。

そして、特許発行手数料および次の年金のうちの最先のものを支払う際に、所定の届出を行い通常の費用を支払う必要があります。

ただし、少しでも節約したいということで誤魔化すようなことがあってはいけません。そういう場合は米国特許商標庁に対する詐欺行為とみなされる可能性もあるので、注意してください。詐欺行為とみなされた場合には権利行使不能となるかもしれません。

質問者
米国に特許出願する場合、小規模事業体は50%、極小規模事業体は75%の割引きが受けられる可能性があります。覚えておいてください。

では、小規模事業体と極小規模事業体について、もう少し詳しく解説しておきましょう。

小規模事業体

小規模事業体に該当するための要件の概要は以下の2点です。

  1. 関連会社を含めて従業員が500人以下であること
  2. 当該発明に係る権利について、小規模事業体に該当しない企業等に現在、譲渡またはライセンスしておらず、また、将来の譲渡またはライセンスに関する契約等も存在しないこと

②は正確には以下の条件に該当する場合です。

  • 発明に関する権利を、人、小規模事業体若しくは非営利団体としての小規模事業体の資格を有していない人
  • 事業体若しくは団体に対し、譲渡、譲与、移転若しくはライセンスしていないもの
  • 契約上若しくは法律上、譲渡、譲与、移転又はライセンスする義務を負っていない

しかし、判断が難しい場合は現地代理人に確認するのがよいでしょう。例えば、ベンチャー企業が大企業から資金提供を受ける代わりに当該大企業にライセンス許諾の予定がある場合等には十分な注意が必要です。

質問者
細かい条件はありますが、従業員が500人以下の場合には小規模事業体と認められる可能性があります。

極小規模事業体

極小規模事業体に該当するための要件の概要は以下になります。

  1. 小規模事業体の要件を満たし
  2. 過去の発明者としての米国出願が4件以下
  3. 収入が米国世帯収入の中央値の3倍を超えていないこと
  4. 収入が米国平均世帯収入の3倍を超える者へライセンス等をしていないこと

④は、正確には以下のような条件となります。

その関係する出願に係るライセンスその他の所有権権益を、該当する手数料が納付される暦年の前暦年において、1986 年内国歳入法典第61条(a)に定義されている総収入であって、国勢調査庁によって最近年に報告された、前記の前暦年の家計収入中央値の3 倍を超えるものを有している事業体に譲渡、付与又は移転しておらず、また、契約又は法律による譲渡、付与又は移転の義務を負っていない

しかし、判断が難しいと思われる場合には現地代理人に確認してください。

質問者
米国での特許出願を行うときには、費用の軽減が受けられるかどうかを確認するのが良いですね。
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