特許出願の手続きの流れと7つの特許要件!

質問者
特許出願ってすごく難しそうですよね。
誰でも出願できるものですか?
酒谷弁理士
そうですね。特許出願自体は誰でもできますよ。
ただ、簡単かと言われると、簡単ではないかもしれませんね。
質問者
でも、頑張って特許出願しても特許が認められるとも限りませんよね?
酒谷弁理士
確かに特許出願しても、審査の過程で特許要件を満たせないと特許が認められない場合もありますね。
そうならないためにも、まずは特許出願の手順と特許要件について把握していきましょう!

今回は特許出願手続きの流れについて、7つのステップでわかりやすく解説していきましょう。特許出願は状況によって様々な手続きが必要になりますので、参考にしてください。

日本における特許出願手続きの流れ!

日本における特許出願手続きの流れ!

日本における特許出願手続きの流れは次のようになります。

特許出願手続きの流れ
  • ステップ1
    特許出願
    まずは、特許出願書類を特許庁に提出します。特許出願書類には次の物が含まれます。

    • 願書:出願人及び発明者の名称等を記載
    • 明細書:具体的な技術内容
    • 特許請求の範囲:出願人が希望する特許権の権利範囲を記載
    • 図面:明細書とともに技術内容を説明するための図面
  • ステップ2
    審査請求
    次に、特許出願の日から3 年以内に審査請求をします。

    質問者
    ちょっとびっくりです。
    3年って少し長いと思うのですが・・・
    酒谷弁理士
    そうですね。発明によっては実際に製品に搭載されるのが、数年後になるものもありますので、実際に製品に搭載するものや、他社牽制に効果があるものだけを吟味して審査請求することができるために、このように3年間の猶予期間が与えられています。
    ちなみに、3年以内に審査請求しなかった場合には、その特許出願は取り下げたものとみなされます。
  • ステップ3
    審査
    審査請求をすると、審査官が審査を開始します。通常、審査請求をして約1年後に審査結果が返ってきます。

    質問者
    更に1年も掛かるんですか?
    酒谷弁理士
    実は、早期審査またはスーパー早期審査を申請することによって短縮することもできます。
    これについては別記事で解説していますので下記リンクを参考にしてください!
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    審査官は、拒絶理由に該当すれば拒絶理由通知を発行し、拒絶理由がなければ特許査定を発行します。

  • ステップ4
    拒絶理由通知

    審査の結果、特許要件を満たしていないものがある(=特許登録を拒絶する理由すなわち拒絶理由がある)と判断された場合には、拒絶理由通知が発行されます。

    質問者
    拒絶理由通知って何ですか?
    酒谷弁理士
    この後、下で説明しますが、特許要件を満たしていない場合に発行される通知で、拒絶理由通知の中には、どの特許要件を満たしていないかについて記載されています。

  • ステップ5
    意見書/補正書提出
    質問者
    拒絶理由通知にはどのように対応するばよいのですか?
    酒谷弁理士
    返ってきた審査結果が拒絶理由通知であれば、拒絶理由通知の発送日から60日以内に、反論を記載した意見書や請求項などを補正した補正書を提出する対応が必要になります。

    補正をしなくても拒絶理由が解消できそうであれば、反論を記載した意見書の提出だけで済みます。一方、請求項を補正しないと拒絶理由が解消しない場合には、拒絶理由通知で挙げられた拒絶理由が解消するように、請求項を補正しましょう。

    なお、この拒絶理由通知期間内に、期間延長申請をすることによって、この期間を2か月間延長することができます。

  • ステップ6
    特許査定

    当初の審査で拒絶理由がないと判断された場合、または解消した場合、特許査定が発行されます。

    また、拒絶理由通知に対して提出した意見書及び/または補正書の内容について審査官が審査し、拒絶理由が解消されたと判断されれば、特許査定が発行されます。

  • ステップ7
    特許登録

    特許査定の発送日から30日以内に特許料を納付することによって、特許権を取得できます。また、この特許登録前の期間が、分割出願できる最後のチャンスですので、他の特許権を取得したい発明が特許出願に含まれている場合には、分割出願を忘れずにしておきますしょう!

    出願人の事情によっては特許査定の発送日から30日以内に特許料を払えない場合があるかもしれません。その場合は期間内に延長申請をすることで30日間延長することも可能です。

  • 残念ながら拒絶理由が解消されなかった場合

    一方、拒絶理由が解消されていないと判断された場合、次の2つのパターンになります。

    • 新たな拒絶理由が発見された場合 → 新たな拒絶理由通知が発行される
    • 新たな拒絶理由がない場合 → 拒絶査定が発行される
  • 拒絶査定

    拒絶理由通知に応答したとしても、残念ながら拒絶理由が解消せずに拒絶査定になる場合があります。

    拒絶査定に対して、次の2 通りの対応が可能です。

    • 拒絶査定不服審判を請求して争う
    • 分割出願する

    いずれも、拒絶査定の発行日から3月以内に対応する必要があります。

     

    更に軽微な補正することによって、拒絶査定に記載された拒絶理由を解消できそうであれば、拒絶査定不服審判を請求するのがおすすめです!

    質問者
    どうして拒絶査定不服審判を請求するのがおすすめなのですか?
    酒谷弁理士
    実は、同じ審査官がもう一度審査することになるんです。ですから、早期に特許権を取得することができる可能性が高くなります。

    一方、大きな修正をしなければならない場合には、分割出願することをお薦めします。拒絶査定不服審判時の補正は、軽微な補正しかできないからです。

    仮にこの拒絶査定不服審判後に特許査定になった場合、その後の特許登録までの期間には分割出願をすることができないので、この拒絶査定の発行日から3月以内の期間に分割出願することを検討することをおすすめします。

    酒谷弁理士
    この拒絶査定の発行日から3月以内の期間期間を逃すと、分割出願ができなくなる可能性があるので気を付けなければなりません。
質問者
特許出願の手続きの流れがわかりました。
一度、手続きの流れがわかると安心ですね。

特許要件

特許要件

質問者
ところで、特許要件ってどのようなものがあるのでしょう?
質問者
特許要件には主に次の7つがあります。
  1. 新規性
  2. 進歩性
  3. 明確性
  4. 実施可能要件
  5. サポート要件
  6. 新規事項追加
  7. 単一性違反

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1 新規性

発明が、出願時点において日本だけでなく世界的に新しいという要件です。

審査において審査官は、出願に係る発明と同一または類似の技術が記載された文献を検索します。請求項に係る発明が、1つの文献に記載された技術内容と同じ場合に、新規性がないとする拒絶理由が通知されます。

2 進歩性

発明が、出願時点においてその分野の技術者(当業者)が容易に想到できたものでないことという要件です。

請求項に係る発明が、以下のような場合には進歩性がないとする拒絶理由が通知されます。

  • 1つの引用文献の技術から当業者が容易に想到できる場合
  • 1つの引用文献に係る技術に当業者が適宜取り得る設計事項を組み合わせることにより同じ発明になる場合
  • 複数の引用文献に記載された技術内容を組み合わせることができ、組み合わせると同じ発明になる場合
質問者
但し、発明の構成に容易に想到できたとしても、予測できない顕著な効果がある場合には、進歩性が認められます。

3 明確性

請求項に記載された発明が明確であるという要件です。

請求項に記載された発明について、以下のような場合は明確でないとする拒絶理由が通知されます。

  • 意味が不明である場合
  • 複数の解釈が取り得る場合
  • 技術的にどのように処理されているのか不明な場合

4 実施可能要件

請求項に記載された発明が、その分野の技術者(当業者)が明細書及び図面を読んで実施することができるという要件です。

請求項に係る発明について以下のような場合には、その分野の技術者(当業者)が実施可能でないとする拒絶理由が通知されます。

  • その分野の技術者(当業者)が明細書を読んでも実現できるように記載されていないとき
  • 実現不可能な発明が含まれるとき

5 サポート要件

請求項に記載された発明が、その課題を解決できる程度に明細書及び図面に記載されているという要件です。

請求項に係る発明について、以下のような場合には請求項に係る発明が明細書及び図面によって裏付けられていないとするサポート要件違反拒絶理由が通知されます。

  • その発明の課題を解決する程度にその発明が明細書及び図面に記載されていない場合

6 補正が新規事項の追加ではない

特許請求の範囲、明細書または図面を補正することによって、出願時における特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された範囲に記載されていない新たな技術事項が導入されていないいう要件です。

特許請求の範囲、明細書または図面を補正することによって、出願時における特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された範囲に記載されていない技術事項を導入することになった場合、新規事項追加の拒絶理由が通知されます。

7 単一性

全ての請求項の発明に、共通の特別な技術的特徴が含まれているという要件です。

特許請求の範囲には複数の請求項を記載することができますが、1つの請求項に記載された特別な技術的特徴が、別の請求項に記載された特別な技術的特徴と共通していない場合には、発明の技術的特徴に単一性がないとする拒絶理由が通知されます。

質問者
特許要件には主に7つの要件があることがわかりました。
特許出願する際に気をつけたいですね。

特許出願手続きのまとめ

特許出願手続きのまとめ

質問者
やはり特許出願は予想通り手続きが多くて大変なイメージですね。
質問者
確かに手順は多いかもしれませんね。まずは一度特許出願をして審査請求をするところから始めてみましょう。

今回は特許出願の手順について詳しく解説しました。

特許出願をする場合には必ず審査請求を行い、審査されることになります。しかし、残念なことに多くの場合は拒絶理由が見つかります。そして、拒絶理由がある場合には意見書・補正書の提出をしなければなりません。

また特許査定を受領した後にも、期間内に特許料を納付しなければならないという点も注意が必要。しかし、それでも特許権には多くのメリットがあるので、何か新たなことを発見した場合には特許出願の相談をしてみてください。

質問者
特許出願から特許登録までは、意外と多くの手続きが必要だということがわかりました。
簡単に特許が取得できるというわけではありませんが、多くのメリットがあるので頑張って取得したいですね。
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