【不正競争防止法の意義】企業活動を正しく行うために!

質問者
不正競争防止法というのがあると思うのですが、どのようなものが取り締まりの対象なのでしょう?
酒谷弁理士
いわゆるデッドコピー品の販売や、営業秘密の不正漏洩などが対象です。少し複雑なので、詳しく解説しましょう。

今回は不正競争防止法について取り上げます。不正競争防止法とは何の為に設けられ、どのような内容なのか記事内で詳しく解説しています。もしデッドコピー品などの被害に遭われている場合には参考にしてください。

不正競争防止法とは?

不正競争防止法とは?

質問者
不正競争防止法は何のために制定されたものなのでしょう?
酒谷弁理士
不正競争防止法は不正競争の防止を目的として設けられた法律です。詳しく説明しましょう。

不正競争防止法は、以下の2点を確保するために設けられた法律です。

  • 公正な競争
  • 国際約束の的確な実施

条文を見てみると第1条には以下のように規定されています。

この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

質問者
公正な競争をすることで経済活動も活発になります。国際的な側面を考えても非常に重要なことですね。

不正競争防止法の意義

不正競争防止法の意義

質問者
不正競争というものがどのようなものなのかイメージが湧きませんが・・・
酒谷弁理士
簡単に言うと、競争相手に対してズルいことをしてる場合ですね。具体的に説明しましょう。

まず、不正競争とはどのようなものでしょうか。例えば、以下のようなことが考えられます。

  1. 競争相手を貶める風評を流す
  2. 商品の形態を真似する
  3. 競争相手の技術を産業スパイによって取得する

このような「不正な行為」や、民法第709条に定められている「不法行為競争」が行われると、正常な市場の競争ができなくなります。ですから、このような不正・不法行為が行われないことが市場経済社会が正常に機能するための大前提となります。

また、ある商品やサービスの人気が高まって有名になってくると、必ずと言っていいほど模倣品粗悪品が出回るようになります。しかし、そのような状況では消費者側としても安心して商品やサービスの購入ができないという状況になるでしょう。

つまり、上記のような不正・不法行為によって正常な競争ができなくなることで、経済的な発展は望めなくなることは容易に想像できます。ですから、不正競争防止法は不正・不法行為による競争を無くすことが狙いとしています。

不正競争防止法では、保護する対象に対して行為の規制(禁止)となる要件を定めることで、特許権・商標権・意匠権などの産業財産権では十分守りきれない範囲の形態を不正競争行為として取り締まっています。詳しくは以下の表1をご覧ください。

表1 不正競争行為の類型
類型 形態
周知表示混同惹起行為(第1号) 需要者の間に広く認識されている他人の商品等表示と同一または類似の商品等表示を使用し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為 「日本ウーマン・パワー」が周知な商号「マンパワージャパン」の通称「マンパワー」に類似するとして周知表示混同惹起行為に該当するとした裁判例がある。
「商品等表示」には「商品の形態」も含まれ、「リーバイスのジーンズのバックポケット部分の弓形のステッチ模様」、「ロレックスやカルティエの時計の形態」が周知商品等表示に該当するとされた裁判例がある。
著名表示冒用行為(第2号) 他人の著名な商品等表示と同一または類似のものを自己の商品等表示として使用する行為。ただ乗り(フリーライド)、ブランドの希釈化(ダイリューション)、汚染(ポリューション)がある。 「スナックシャネル」の名称で飲食店を経営した行為が、著名ブランド「シャネル」社と何らかの関係を誤認するとして著名表示冒用行為に該当するとされた裁判例がある。
商品形態模倣行為(第3号) 最初に販売された日から3 年以内の他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡・貸し渡し・譲渡や貸渡しのための展示・輸出・輸入を行う行為。デッド・コピー。形態の模倣には、同種の商品(または機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態は含まれない。 内部構造に特徴がある小型ショルダーバックの内部構造を真似て商品を販売した行為など
営業秘密不正利用行為(第4~10号) 企業の内部において、秘密として管理されている(秘密管理性)、製造技術上のノウハウ、顧客リスト、販売マニュアル等の有用な情報(有用性)であって、公然と知られていない(非公知性)ものを、不正な手段で入手する行為、また入手した情報を自ら使用または開示する行為(4号)
・4号で取得された情報を第三者が取得し、第三者が使用または開示する行為(最初から知っていた場合は5 号、後から知った場合は6号)
・保有者から正当に取得した情報を、不正の利益を得る目的、損害を与える目的で自ら使用または開示する行為(7号)
・7号で取得された情報を第三者が使用または開示する行為(最初から知っていた場合は8 号、後から知った場合は9号)、知らずまたは重過失ではない過失によって知らずに4~9号までに掲げる行為(営業秘密のうち、技術上の情報であるものを使用する行為に限る)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡もしくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、または電気通信回線を通じて提供する行為(10号)
会社の秘密管理された顧客名簿を複写などして持ち出して独立・転職・転売した場合や、不正に入手されたライバル会社の営業情報や顧客リスト等を取得した場合等の他、ソフトウェア受託開発企業が、顧客から預かった情報を、自ら使用するか、第三者へ開示する場合
技術的制限手段に対する不正競争行為(第17・18号) デジタルコンテンツのコピー管理技術やアクセス管理技術を無効にすることを目的とする機器やプログラムを提供する行為 CD に納められたゲームソフトのコピープロテクト信号を無効化してコピーされたものを利用可能にする「チップ」を提供する行為
コピープロテクト信号が記録された地上・衛星デジタル放送、CD・DVD・BD やインターネット上のストリーミング配信および音楽・映像ダウンロードサービスのプロテクトを解除する機器・ソフトウエアを提供する行為
ドメインネーム不正取得等行為(第19号) 不正の利益を得る目的または他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示と同一または類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有し、又はそのドメイン名を使用する行為 大手サイトと類似する紛らわしい名称で、類似のサイトを開設する行為
原産地等誤認惹起行為(第20号) 商品・役務(サービス)やその広告・取引用の書類・通信に、その商品の原産地・品質・内容・製造方法・用途・数量や、役務の質・内容・用途・数量について誤認させるような表示を使用したり、その表示をして役務を提供する行為 国産洋服生地に「マンチェスター」と表示した行為、「MADE IN KOREA」の表示を外して服を販売した行為、「みりん風調味料」を「本みりん」のように紛らわしい表示をして商品を販売した行為等
競争者営業誹謗行為(第21号) 自己と何らかの競争関係にある他人の営業上の信用を害するような虚偽の事実を他人に告げたり流布したりする行為 ライバル会社の商品が特許侵害品であると虚偽の事実を流布し、営業誹謗を行った行為
代理人等商標無断使用行為(第22号) 外国(条約で保護された国)における商標について、商標権者の承諾無しに、その代理人がその商標と同一または類似する商標を同種の商品、役務に使用し、その商品の譲渡若しくは輸入等を行い、その同一または類似する商標を使用して役務を提供する行為 外国製品の輸入代理店が、その外国メーカーの許諾を得ずに勝手にその商標を類似の商品に使用するような行為

以下の図1は、上記の営業秘密不正利用行為(第4~10号)の対象をまとめたものです。

図1 「営業秘密」で不正競争行為の対象
図1 「営業秘密」で不正競争行為の対象

出典:経済産業省「不正競争防止法平成30年改正の概要(限定提供データ、技術的制限手段等)」をもとに作成

質問者
日本の経済、世界の経済のことを考えると、不正競争防止法は非常に重要です。不正・不法行為での競争は行わないようにしましょう。

不正競争行為に関する注意点

不正競争行為に関する注意点

質問者
不正競争がダメなことは良く理解できましたが、不正競争行為に関する注意点などありますか?
酒谷弁理士
不正競争行為かどうかの判断基準が重要となります。

不正競争防止法では、上記に挙げた不正競争行為に対して下記2点の請求が可能です。

  • 差止請求
  • 損害賠償請求

ただし、不正行為と認定される為には、不正行為の要件を満たしているかどうかが非常に重要です。特に、営業秘密については、次の3つの要件を全て満たす必要があります。

  1. 秘密管理性(秘密として管理されていること)
  2. 有用性(製造技術上のノウハウ、顧客リスト、販売マニュアル等の有用な情報)
  3. 非公知性(公然と知られていないこと)

秘密管理性については抜け落ちている場合が多いので、営業秘密を特定して当該営業秘密にアクセスできる者を制限して管理する体制を作ることが重要です。

質問者
不正行為か否かの判断には秘密をきちんと管理しているということが大前提ということですね。

では、不正行為に該当する例としてデッドコピーの販売について見ていきましょう。

相手が自社商品のデッドコピー品を販売している場合

元の製品・商品の権利者の適切な許認可を得ることなく複製した模造品を販売しているというケースがあります。この模造品がデッドコピー品です。

不正競争行為防止法では、自社が商品の販売を開始してから3年の間はデッドコピー品の販売元に製造販売の中止損害賠償を請求することができます。その場合にまず行わなければならないのが、相手の商品がデッドコピー品に該当するか否かの判断です。ただし、デッドコピー品か否かの判断は難しい場合もあるので、慎重に行わなければなりません。

その上で、デッドコピー品であるという確証が得られ場合には、相手に対して内容証明郵便にて警告書を送付することを検討しましょう。

警告書には以下のような内容が記載されます。

  • 自社で販売を開始した日付
  • 自社商品の形態
  • 相手の商品の形態
  • 自社商品の形態と相手の商品の形態が同一であり不正競争行為に該当することについて

なお警告書を作成する場合は外部の専門家(弁理士または弁護士)に相談されることをお勧めします。

では、警告書を送付した場合に相手からの回答が得られなかった場合にはどうすれば良いのでしょうか?以下のような場合には、法的手続きを検討するべきです。

  • 相手から回答が得られない
  • 話し合いに応じない
  • 交渉したけれども合意に至らない

日本の裁判所への法的手続きとしては、『不正競争行為の停止を求める仮処分申立て』と、『本案訴訟(通常の訴訟)』の2 つがあります。

また、デッドコピー品には海外の工場で生産してから日本に輸入している場合も多いので、その場合には税関における差し止めを請求することも有効です。

但し、法的手続きについては高い専門性が必要となりますから、外部の弁護士・弁理士に相談することをおすすめします。

質問者
不正競争行為により被害を受けた場合、その商品やサービスに対して差止請求できるとともに、損害賠償請求が可能なんですね。法的手続きは専門性が高いので弁護士・弁理士へ相談をすると良いですね。
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