ということで本日の記事は、他社の意匠権・商標権に抵触しないか否かの検討と不正競争行為に該当しないか否かの検討について取り上げます。詳しく解説していきますので、是非最後までご覧ください。
他社の意匠権に抵触しないか否かの検討の必要性
以下のような場合について考えてみましょう。
- 自社で新たなデザインの製品を企画
- 他社の商品の形態を研究して類似の形態を持つ商品の開発が検討
まずは、その商品について意匠権が取得されていないかどうか調査する必要があります。仮にその商品の形態について意匠権が取得されている場合には、その意匠権はその登録意匠の類似範囲にまで及びます。
ですから、自社の商品の形態がその類似範囲に入らないようにする必要があります。
それでは登録意匠の類似範囲は、どのようにして決まるのでしょうか?登録意匠の類似範囲について図1に例を用いて説明します。
例えば、以下のような場合を考えてみましょう。
- 他社Bがクッションについて上記のようにドーナツ状の形態について意匠登録済み
- 登録意匠Xの出願前に公知の意匠(以下、公知意匠という)Yとしてハート型のクッションがあった
- 自社がリング状で直径方向に直線状の素材が入ったクッションの販売を企画した
ここで、裁判において被告意匠のことをイ号意匠と呼ぶことから、自社のクッションの形態をイ号意匠Zと呼ぶことにします。
自社の製品形態が、他社の登録意匠と公知意匠のどちらにより似ているかを判断して、仮に登録意匠の方により似ていれば登録意匠に類似するので、当該他社の意匠権に抵触します。
一方、仮に自社の製品形態が公知意匠の方により似ていれば登録意匠とは非類似と判断され、当該他社の意匠権に抵触しません。
上記の例の場合、外縁の形状が円状である点で、イ号意匠Zは基本的な形態が公知意匠Yよりも登録意匠Xの方により似ています。このような場合には、登録意匠Xに類似し、当該意匠権に抵触すと判断される可能性があるので、製品形態の変更を検討しましょう。
他社の商標権に抵触しないか否かの検討の必要性
商標権は、平面的な文字だけでなく、以下のようなものも登録することが可能です。
- 模様(例えば、ルイ・ヴィトンのモノグラム)
- キャラクタ(例えば、冷えピタシートのキャラクタ)
- 3次元的な形態(以下、立体商標という)
売れている他社の商品のパッケージを研究して、類似のパッケージについて商品を開発することが行われる場合があります。
その場合、まずは、その商品パッケージに付されたキャラクタ、その商品パッケージそのものの形態について商標権が取得されていないかどうか調査する必要があります。
登録商標が指定する商品・サービスと同一または類似している商品またはサービスについて、登録商標と同一または類似の商標を使用している場合に、当該商標権の侵害になります。
商標の類比は、以下を総合的に判断して決まります。
- 外観
- 称呼
- 観念
登録商標の類似範囲について以下に2つの例を用いて説明します(図2)。
例えば、他社Bが、「洋服(第25類)」を指定商品にして上記の登録商標を取得していたとします。この場合に、自社Aが、洋服に上記のイ号商標をプリントして販売することを企画したとします。
この場合、登録商標とイ号商標とが、
- 外観
- 称呼
- 観念
の観点から総合的に類似しているかどうか検討することになります。
この例の場合、 外観が文字の「スマイル」に、外縁が丸の笑った表情の図柄が記載されている点において類似しております。
また両者は「スマイル」と記載されているから「微笑み」という共通の観念を生じるだけでなく、「スマイル」という共通の称呼を生じます。
よって、総合的に類似と判断されます。
このような場合には、イ号商標を、登録商標に類似しないように、変更することを検討しましょう。
例えば、他社Bが、飲料水を指定商品にして上記の登録商標を取得していたとし ます(図3)。この場合に、自社Aが、飲料水の缶をイ号商標の商品名で販売することを企画したとします。
この場合にも、登録商標とイ号商標とが、外観、観念、称呼(呼び名)の観点から総合的に類似しているかどうか検討することになります。
この例の場合、外観上、英字1文字違いで「F〇NKEE」という文字が記載されている点において類似しております。また両者は、「ファンキー」という共通の称呼を生じます。
よって、総合的に類似と判断される可能性が高いです。
このような場合にはイ号商標を、登録商標に類似しないように変更することを検討しましょう。
不正競争行為に該当しないか否かの検討の必要性
不正競争防止法では、他社の新商品販売後3年以内は、その新商品の形態を模倣した商品を販売した場合、不正競争に該当すると規定しています(不正競争法2条1 項3号)。
不正競争行為に該当した場合、以下の請求をされる可能性があります。
- 販売差し止め
- 損害賠償の請求
よって、その新商品の形態を模倣した商品の販売を企画するのはやめましょう。