特許について知ろう!特許権取得の4つの大きなメリットとは?

質問者
特許って、イメージは何となくわかるのですが、具体的なことがわかりません。特許を取得すると、どんなメリットがあるんですか?
酒谷弁理士
特許制度は発明を保護するものですね。
特許を取得すると、その特許発明の他社による実施を排除できるので、模倣品・模倣サービスを排除するのに有効なんです!
独自の技術を他の会社が真似できないようにすることができるので、その独自の技術が顧客に訴求できる技術であるならば、オンリーワンの技術として競争力を維持することができます。このように戦略的に特許を取っていくことが、企業戦略では大切なんですよ。

今回は特許とはどのようなものなのか、そして特許を取得することによって得られるメリットについて詳しく解説しましょう。

特許制度の意義とは?独占権が認められない場合はどうなる?

特許制度の意義とは?独占権が認められない場合はどうなる?

特許制度とは、新規で有用な発明を出願した者(出願人)に対して、その発明の実施の独占権を出願から20 年間認める制度です。

質問者
独占権???
独占権が認められなかったら何か困ることがあるんですか?
酒谷弁理士
独占権が認められないと、多くの方が困ることになります。
では、わかりやすいように独占権が認められない場合について考えてみましょう!

仮に出願人に独占権を認めない場合、以下のようなことが考えられます。

  1. 出願人は発明が他人に模倣されることを恐れて出願人は発明を秘密にする
  2. 発明が社会的に活用されなくなる

上記のようなことを避けるため、新規で有用な発明を世の中に提供した代償として、一定期間、その発明を排他的に独占的に実施する権利(特許権)を国が付与するというものです。

特許で保護される発明とは?

特許で保護される発明とは?
日本の特許で保護される発明は、特許法上の発明に該当し、産業上利用できる発明である必要があります
質問者
ところで、保護される発明ってどんなものですか?
酒谷弁理士
簡単に言うと、「技術的な創作」です。
実は保護される発明についてはきちんと定義されています。詳しく説明しましょう。

発明の定義とは「技術的な創作」のこと!

日本の特許法において、保護の対象となる発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています。

ですから、この定義にいう「発明」に該当しないものに対しては特許が付与されません。そこでまずは、その新しい技術が発明であるか検討する必要があります(特許法2 条1項)。

特許法上の発明には、次のようなものが該当します。

  • 機械、電子機器、電子デバイス、コンピュータプログラム、化合物、化学組成物などの物の発明
  • 物の製造方法に特徴がある製造方法の発明
  • 検査方法など方法に特徴がある方法の発明

一方、特許法上の発明に該当しないものについて、特許庁の審査基準に具体例が示されています。以下、特許庁の審査基準を抜粋して説明します。

 

①発明に該当しないもの
(ア) 自然法則自体(例:①自然法則以外の法則(例:経済法則)、②人為的な取決め(例:ゲームのルールそれ自体)、③数学上の公式、④人間の精神活動、上記①から④までのみを利用しているもの(例:ビジネスを行う方法それ自体))
(イ)単なる発見であって創作でないもの(例:万有引力の法則の発見)
(ウ)自然法則に反するもの(例:永久機関)
(エ)自然法則を利用していないもの
(オ)技術的思想でないもの
①技能(例:フォークボールの投げ方)
② 情報の単なる提示(例:マニュアル、音楽が録音されたCD、画像データ、運動会のプログラム、コンピュータプログラムリスト( コンピュータプログラムの、紙への印刷、画面への表示等による提示(リスト) そ
のもの))
③単なる美的創造物(例:絵画、彫刻等)
(カ) 発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの

産業上利用できない発明とは?

質問者
たとえば、子どもが何か考えついたときに、
「それ、凄く面白いアイディアだね!」
ってことがありますよね。あれも発明ですか?
酒谷弁理士
はい、発明になり得るものもありますね。
実は日本の特許法では、産業上利用することが発明の条件の1つになっているんです。

日本の特許法では、特許の付与対象としては、産業上利用することが発明であることが条件の1つです。しかし、通常は

  • 製造できるもの
  • 販売できるもの

であれば、発明に該当します。

日本では、以下に該当する技術は、産業上利用することができないとみなされ、特許の対象とはなりません。以下、特許庁の審査基準を抜粋して説明します。

①人間を手術、治療又は診断する方法の発明
②その発明が業として利用できない発明
(ア)個人的にのみ利用される発明(例:喫煙方法)
(イ)学術的、実験的にのみ利用される発明
③ 実際上明らかに実施できない発明(理論的にはその発明を実施することが可能であっても、その実施が実際上考えられない発明)
(ア) 例:オゾン層の減少に伴う紫外線の増加を防ぐために、地球表面全体を紫外線吸収プラスチックフイルムで覆う方法

但し、①の「人間を手術、治療または診断する方法」は、日本の特許法では特許対象にはなりません。しかし、米国の特許法では保護対象になりえるので、保護対象は国によって異なる点に注意が必要です。

質問者
産業上利用できる発明は特許を取得することによって20年間の独占権を認められるということなんですね。

特許権を取ることで得られる4つのメリット!

特許権を取ることで得られる4つのメリット!

質問者
じゃあ、特許を取得した場合にはどんなメリットがあるんですか?
酒谷弁理士
実は特許権は非常に強い権利なんです!
特許権を取得した場合のメリットについて具体的に見ていきましょう。

特許権により他社の模倣を排除!参入障壁を構築しよう!

特許法により、以下のように特許権は非常に強い権利とされています。

  • 特許権を付与された場合には、その特許権者は、出願日から20 年間独占的に実施する権利が得られます(特許法68 条)。
  • 特許の権利範囲に該当する技術の実施は、特許を侵害する行為であり、特許権者は、その行為を差し止める権利(差止請求権)を有します(特許法100 条)。
  • 特許権者は、当該特許権を侵害した者に対して、特許権者(又はその法定代理人)が損害及び加害者を知った時から3 年間分については、民法709 条に規定された損害賠償請求権に基づいて、損害賠償金を相手方に請求することができ、直近10 年〜直近3 年までの間については、民法703 条の不当利得返還請求権に基づいて、相手方がその特許で得た不当利得を請求することができます。この不当利得返還請求において得られる不当利得は、通常、ライセンスをした場合に受け取れる金額です。
質問者
ですから、仮に競合他社がある会社の特許発明を真似することで特許権侵害になるのは以下の通りですね。
  • 原理的に真似した製品またはサービスが差し止めされて実施できなくなる
  • 過去の実施分について損害賠償金または不当利得返還請求に係る金を請求される

よって、特許を取ることによって、次のようなメリットがあります。

  • 競合他社によるその後の模倣を予防
  • 競合他社が参入しにくくなる

ですから、新規技術の製品を制作される場合は、その製品のリリース前にその新規技術について特許出願をすることをお勧めします。

特許取得で宣伝・広告効果も大きく向上!

質問者
他にメリットは無いんですか?
酒谷弁理士
そうですね・・・
特許を取得することで宣伝効果が得られることでしょうか。

サービスのリリース時に、特許権取得も一緒に発表すると、その技術に独自性があり新規であることについて特許権という裏付けが付くことによって、メディアが取り上げやすくなり、広告・宣伝効果が高まります。

特許を取得することで資金調達も有利!

酒谷弁理士
実は、特許を取得していることでベンチャーキャピタルなどの投資家からの出資にとても有利なんです!

主な特許の取得要件として次の2点があります。

  • 新規性:新しい技術であること
  • 進歩性:その技術分野の者が容易に想到したものではないこと

ベンチャーキャピタルなどの投資家から資金を提供するか否かの判断基準の1つに、その製品・サービスは、本当に自社独自の製品・サービスなのかということがあります。

それに対して、特許権を取っていれば、その特許の対象となった製品・サービスが新規性があり且つ進歩性があるからこそ特許権が取れているのであり、特許権が取れていることが独自の製品・サービスであることの証明になります。

ベンチャーキャピタルなどの投資家が資金を提供するか否かの別の判断基準として、他社(特に大手企業)が追従して、類似の製品・サービスを展開しないかどうかということがあります。

特許を取得していることで次のような理由からベンチャー・中小企業は、勝ち残ることが可能になります。

  • 他社(特に大手企業)が簡単に模倣できない
  • 価格競争に陥ることが無い
  • 特許が参入障壁となる

このように、特許取得はベンチャーキャピタルなどの投資家から資金を調達するときに、有利に働きます。

 

質問者
投資というのはちょっと現実味がないのですが・・・
酒谷弁理士
投資以外にも日本政策金融公庫の資本性ローンの審査に有利というメリットもありますよ!

日本政策金融公庫の資本性ローンは、以下の特徴があります。

(ⅰ) 対象が技術・ノウハウ等に新規性が見られるかた。例えば、特許権などの知的財産権を利用して事業を行うかた、経営多角化・事業転換を図る方などです。
(ⅱ)「 無担保・無保証人」で利用可能です。
(ⅲ) ベンチャーキャピタルからの出資と異なり、株式が希薄化することなく、資金調達ができます。
(ⅳ) 新規開発の投資期間などで赤字が続いており一般的な銀行融資がおりない場合であっても、事業の新規性や社会必要性の観点から審査されるので、資本性ローンがおりる可能性があります。
(ⅴ) 直近決算の業績に応じた、1年ごとの金利が適用され、赤字期間は金利が抑えられます。
(ⅵ) 期限一括返済(最終回の一括払い)となり、それまでの間は、利息のみの支払となります。そのため、融資期間中は元金の返済負担がなく、月々の資金操り負担を軽減することができます。

日本政策金融公庫の資本性ローンは、対象が「技術・ノウハウ等に新規性が見られるかた」ですので、特許権を取得していれば、技術の新規性を証明でき、審査に有利に働きます。

特許権で事業譲渡のときの評価額も向上!

酒谷弁理士
実は、特許権を取得していれば、事業譲渡をする時にもメリットがあります!

特許権を取得していればその事業を独占でき、利益が上がっている事業であれば、その利益の独占構造を維持することができるので、事業譲渡のときの評価額の向上が見込めます。

質問者
特許を取得することで、「参入障壁の構築」、「宣伝・広告効果」、「資金調達に有利」、「事業譲渡の評価額向上」という4つのメリットが得られるということがわかりました。
特許を積極的に取得したいですね!
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