【外形的特徴の模倣防止】特許と意匠を検討しよう!

質問者
新たな製品は外形に特徴があるのですが、他社に模倣されないようにするにはどうしたらいいでしょう?
酒谷弁理士
その場合だったら、特許出願・実用新案出願と意匠出願を検討したほうがいいですね。

ということで本日は、特許出願・実用新案出願と意匠出願について、次の3つの観点から解説していきましょう。

  1. 特許出願・実用新案出願の検討
  2. 意匠権による形態の保護
  3. 外国における意匠権の取得検討

特許出願・実用新案出願の検討

特許出願・実用新案出願の検討

質問者
どのような場合に特許出願と実用新案出願を検討すべきでしょう?
酒谷弁理士
新たな製品の外形に、機能的特徴がある場合は積極的に出願を検討すべきですね。

まず最初に、特許出願・実用新案出願の検討を解説していきます。

新たな製品の外形に、機能的特徴がある場合には、その機能について次の2点を取得できる可能性があります。

  • 特許権
  • 実用新案権

ですから、特許出願・実用新案出願を検討しましょう。

仮に特許出願後にその特許出願に記載の発明が進歩性がない可能性が高いが形態に従来にない特徴がある場合には、特許出願は出願後に意匠出願に変更して、製品の形態を意匠権で保護することが可能です。

この特許出願から意匠出願への変更は、その特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3か月を経過するまで可能です。

意匠出願に変更することができるように、特許出願書類には、製品の外形が分かる六面図を載せておくことが好ましいです。六面図を掲載していないと、意匠の外形が特定できない部分が出てくる可能性があるからで す。

仮に六面図がなく意匠の外形が特定できない部分がある場合には、外形が特定できない部分を除いた部分について部分意匠として登録できる可能性があります。

しかし、外形が特定できない場合、部分意匠でも登録できない場合があります。よって、基本的には、六面図を特許出願書類に載せておくことが望ましいです。

質問者
新たな製品の外形に、機能的特徴がある場合は積極的に出願すべきですが、特許が取得できない可能性が高い場合には途中で意匠出願に変更することも可能です。

特許・実用新案のみの保護による問題点

見た目は同じであるが機能が異なる模倣品(外観だけ真似した模倣品)が販売されている場合、製品の機能について特許権・実用新案権を取得しても外観までは保護されない場合があります。

一般消費者は、外観が同じ模倣品を正規品と間違えて購入してしまう可能性があります。形状だけで何の技術的な効果を生み出さない場合には、特許の取得は困難です。 このような模倣を防止するためには、意匠権による形態の保護が有効です。

質問者
特許・実用新案を取得することは非常に重要ですが、それだけでは不十分な場合があります。

意匠権による形態の保護

意匠権による形態の保護

質問者
特許と実用新案と共に意匠権についても検討すべきでしょうか?
酒谷弁理士
見た目に特徴のある製品なら意匠権は重要ですね。

意匠権による形態の保護例

ワコールの機能性タイツCW-Xは、特許・実用新案だけでなく意匠によっても保護されています。CW-Xのような機能性タイツは見た目にも特徴があるため、意匠の保護対象となりえます。ワコールの機能性タイツCW-Xは、テーピング機能が幾何学的模様となっており、見た目にも特徴があります。

そこでワコールは特許だけではなく(特許第1919040号、特許第3012819号)、下半身、上半身、膝など各部用の商品ごとに形態も意匠登録しました(意匠登録第1021887号)。

理由は「模倣品は見た目だけをまねて機能がない場合も多く、特許だけでは守れない」からです。

質問者
特許・実用新案だけでは保護できない場合もあるので、意匠権も取得するのがおすすめですね。

意匠によるデザイン保護

意匠の場合、模倣品が登録意匠と完全に同一でなくても、登録した意匠に類似している場合には意匠権の侵害となります。従って、模倣品が販売された場合でも、模倣品が登録意匠に類似していれば、その意匠権により模倣品を市場から排除することができます。

但し、登録意匠の類似の範囲については、先行意匠との関係で、その範囲が狭くなったり広くなったりすることに注意が必要です。

すなわち、模倣品が、登録意匠よりも、その登録意匠の出願前に存在する先行意匠の方に類似していれば、登録意匠の権利範囲に入らない可能性が高く、逆に登録意匠の方に類似していれば登録意匠の権利範囲に入る可能性が高いという点に注意が必要です。

このようになっている理由は、登録意匠の権利範囲が、仮に先行意匠または先行意匠に類似する範囲にまで及ぶとすると、登録意匠の前に先行意匠を使用していた第三者がその意匠を 使用できなくなってしまうという不利益を被ってしまうので、そのような事態を回避するためです。

意匠は、特許よりも早期に権利化することができ、料金も特許と比較すると安いです。ただし、特許と同様に新規性・創作性が必要とされるため、製品販売前に意匠登録出願する必要があります。

近年の意匠法改正により、意匠権は出願日から25年間存続可能になったため、特許権(出願日から20年間有効)よりも長く保護を受けられるというメリットがあります。

質問者
意匠は、取得に掛る期間も料金も特許よりもお得感がありますが、新規性と創作性が必要なのでなるべく早く出願するのが良いということですね。

製品についての展示会またはプレスリリース前に意匠出願すべき

製品に用いる意匠出願する前に、その製品について発表する展示会への出展、及びプレスリリース等は行うべきではありません。

製品についての展示会への出展及びプレスリリース前に、製品の形態について意匠出願すべきです。

質問者
特許・実用新案と共に意匠権についても取得しておけば安心ですね。展示会やプレリリース前に出願しておきましょう。

外国における意匠権の取得検討

外国における意匠権の取得検討

質問者
国内だけでなく、外国でも意匠権を取得すべきでしょうか?
酒谷弁理士
海外展開を考えている場合は、その国での取得を検討すべきでしょうね。

日本だけでなく、販売する国(事業を行う国)及び生産する国において、意匠権を取得する方針を考えましょう。外国で意匠の登録を受ける場合、それぞれの国で個 別に出願手続を行う方法があります。

一方、複数国における意匠権の取得には、ハーグ協定に基づく国際出願が便利です。通常、次の図1のように日本の意匠出願から6か月以内に優先権を主張してハー グ協定に基づく国際出願することで行われます。

優先権を主張することにより、日本出願時を基準として出願の新規性及び創作非容易性が判断されます。

マドプロを用いた外国における商標権の取得の工程
図1 マドプロを用いた外国における商標権の取得の工程
質問者
複数の国で意匠権を取得するなら、ハーグ協定に基づく国際出願を行いましょう。

国際登録された意匠の保護の具体的な内容

国際登録された意匠は、指定国において、次の保護を受けることができます。

  1. 国際登録日から、指定国の官庁に出願されていた場合と同一の効果があります。
  2. 指定国の官庁が、拒絶の通報期間(国際公表から6か月又は12か月)内に拒絶する旨の通報をしない場合には同期間の経過時、拒絶の通報後に当該通報を取り下げた場合はその取下げ時、又は、拒絶の通報期間内に保護の付与の声明を行った場合はその声明時から、指定国の法令に基づく保護の付与と同一の効果が得 られます。
  3. 国際登録の存続期間は、国際登録日から5年です(その後更新可能)。
質問者
意匠の国際登録においては、上記3つの内容が保護されます。存続期間は5年で、その後は更新が必要なので注意してください。

国際出願のメリット

ハーグ協定に基づく国際出願には次のメリットがあります。

  1. 1通の願書・図面をWIPO(国際事務局、特許庁経由も可)に提出すれば、国別の出願手続き、翻訳が不要になります。但し、国際出願の言語は、英語、フランス語、 スペイン語の中から任意に選択します。
  2. 1つの国際出願で、複数の指定国を選択することができます。また、1つの国際出願に、最大100までの意匠を含めることができます。
  3. 審査期間が明確です(無審査国:6か月以内、審査国:12か月以内。)
  4. 更新の手続はWIPO国際事務局に対して行うものであり、指定国ごとに行う必要がありません。
質問者
ハーグ協定に基づく国際出願を行った場合には多くのメリットがありますが、その中でも一番のメリットは、国別の出願手続き、翻訳が不要になるという点でしょう。

国際出願のデメリット

一方、ハーグ協定に基づく国際出願には次のデメリットがあります。

  1. 国際登録された意匠は、国際登録から6か月で国際公開されます(30か月公開繰 り延べも可能だが、出願指定国に公開繰り延べの禁止や短期化を宣言する国が含まれると最短時期に合わせて公開される)。
  2. ある国で登録が拒絶された場合、その拒絶理由が公開され、他国でも拒絶や無効とされる可能性があります。
質問者
複数国における意匠権の取得には、ハーグ協定に基づく国際出願が便利ですが、デメリットもあるので注意しましょう。
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