【海外・他商圏での事業展開】ライセンスの注意点!

質問者
現在、海外のとある会社との商談が進んでいるのですが・・・
酒谷弁理士
良い展開ですね。ライセンス契約でしょうか?
質問者
そうです。ライセンスを受けて事業を展開したいという話ですね。注意点があれば教えて頂けませんか?
酒谷弁理士
ライセンス契約書に知財面でのリスク回避の条項を入れるべきでしょう。

海外企業とのライセンス契約を行うということは海外企業に認められたということです。そして、今後もこのようなことが起こるかもしれません。そこで、今回は海外企業とのライセンス契約を行う場合の知財面でのリスクということについて取り上げました。

海外での事業展開に携わる場合は、是非参考にしてください。

日本の他の商圏または海外で事業を展開する方法

日本の他の商圏または海外で事業を展開する方法

質問者
ライセンス契約の種類や注意点を教えてください。
酒谷弁理士
ライセンス契約には2種類あります。詳しく解説していきましょう。

ライセンス契約を行うことで、他社が自社の特許や技術、ノウハウを利用することができるというメリットがあります。他の商圏(自社の商圏とは異なる商圏)または海外で事業を展開する場合には非常に良い方法です。

ライセンス契約を行った会社はライセンス料を支払う代わりに、事業を運営できるというメリットがあるので、正にwin-winの関係でしょう。

自社で特許を取得した技術がある場合、国内・海外問わず技術力ブランド力に魅力を感じているはずです。ですから、それらの力を手に入れて事業を拡大することも可能でしょう。

このようなことを考えると、ライセンスビジネスは収益力強化に非常に有効な手段と言えます。

一般に、技術に関するライセンス契約には次の2種類があります。

  • 特許だけをライセンスする契約
  • 技術と特許を包含した技術ライセンス契約

しかし、技術に関するライセンス契約には難しい点もあり、いずれの契約においても必ず押さえておかなければいけない大事なポイントがあります。それは次の2点です。

  • 現在の事態・将来的な事態を想定し相手方と交渉をして契約書にまとめる
  • その国の法律情報は専門家を通じて事前に押さえておく必要がある

外国企業とのライセンス契約では、ライセンス契約の記載事項よりもその国の法律が優先されることがあります。事前に調査しておきましょう。

質問者
他社とのライセンス契約は収益力強化に有力ですが、その国の法律の調査が必要です。

ライセンス契約書で入れておきたい条項

ライセンス契約書で入れておきたい条項

質問者
具体的にライセンス契約を進めるにあたって、契約書を作りたいと思っているのですが・・・
酒谷弁理士
では、ライセンス契約書に必要な条項を、具体的に見ていきましょう。

ライセンス契約は契約の締結後に様々な問題が発生する可能性があります。ですから、自社がライセンサー(特許を許諾する側)の場合には、問題になりえるリスクを回避するために、ライセンス契約書の内容をよく考えるべきです。

そこで、表1にライセンス契約書の中に記載した方が良い条項についてまとめました。

表1 ライセンス契約書で入れておきたい条項
条項 内容
不争義務 契約締結後に、許諾した特許に瑕疵があることが判明した場合など不慮の事態に備えて、その不慮の事態を理由に紛争が起こらないように、契約当事者間で互いに争わないことを取り決める条項
改良技術 ランセンシー(特許の許諾を受ける側)が契約期間中に開発した改良技術をライセンサーに無償でライセンス(ライセンス・バックという)することを規定する条項
免責規定 ライセンスした特許に起因して相手方に生じた問題については責任を負わないことを規定する条項
不責任義務/ライセンス料不返還 相手方が第三者の特許で攻められた場合にライセンサー(自社)は責任義務を負わないこと、及び/またはライセンスした特許が将来無効になった場合のライセンス料返還義務を負わないことを規定する条項
ライセンス料
  • 支払期間、ライセンスの額、算定方法(ライセンス料率を含む)、支払方法、支払時期、実施報告書について規定する条項
  • 支払方法としては、一般的には、ライセンス料は、①ライセンス締結時にまとまった額(イニシャルフィー)を支払い、②その後に販売額にライセンス料率を掛けた額(ランニングロイヤリティ)を定期的に支払いますが、そのイニシャルフィーの額と、ランニングロイヤリティの支払い時期と販売額が記載された実施報告書の提出義務を規定する。
帳簿閲覧 ライセンシーがライセンス料額をごまかしていないかチェックするために、ライセンシーによって報告する実施料の裏付けとなる帳簿をライセンサーが閲覧することができる権利を規定する条項
監査権 ライセンシーがライセンス料額をごまかしていないかチェックするために、第三者による監査権、及び監査に係る費用負担を規定する条項
質問者
ライセンス契約を行う時には契約書の作成が必要です。後々問題が起こらないように、良く検討して作成してくださいね。

ライセンス契約の注意点

ライセンス契約の注意点

質問者
ライセンス契約を締結する時の注意点はありますか?
酒谷弁理士
まずはお互いが条件に合意しなければなりませんね。具体的に見ていきましょう。

ライセンサーとライセンシーの間で締結されるライセンス契約には、以下のような条件を合意する必要があります。

  • ライセンスの対象特許
  • 利用の態様
  • 独占ライセンスか非独占ライセンスか
  • 特許を利用できる分野
  • ライセンス地域
  • ライセンス期間
  • ライセンス料

特に、慎重に検討した方が良いのがライセンス契約を「独占ライセンス」にするか、「非独占ライセンス」にするかという点です。

独占ライセンスを許諾すると、許諾した「分野」及び「地域」及び「期間」はライセンシーのみが特許発明を実施することができます。

独占ライセンスは、ライセンシーに商権を許諾する行為に近いからです。ライセンシーの立場から考えると、競合他社が同じ特許のライセンスを受けられないように、独占ライセンスを要求することになるでしょう。

しかし、独占ライセンスにはデメリットがあります。それは、独占ライセンスを受けたライセンシーが宣伝・販売を十分に行わない場合、ライセンサーは、許諾した分野及び地域で他の企業にライセンスができなくなります。

ですから、特に独占ライセンスの場合には、契約期間を区切るということを考えるべきでしょう。定期的に契約更新をすることで、ライセンシーが機能しないリスクを最小限に抑えることが可能になります。

また、特定の分野や特定の地域に限定してライセンスすることも有効です。

質問者
ライセンス契約は契約書を完備することが重要ですね。また、「独占ライセンス」と「非独占ライセンス」の違いを良く知っておきましょう。
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