他社に発明の内容を話した!特許を取れるかどうかは守秘義務にあり!

質問者
先日、社内で内覧会があったのですが、新製品の発表会みたいな感じだったんですよ。
酒谷弁理士
参加者は社内の人だけということですか?
質問者
一部、他社の人も招待されていましたが・・・
もしかして、こういう場合って特許が取れなくなるのでしょうか?
酒谷弁理士
はっきりとは言えませんが、特許が取れる余地もありますよ!

今回は新しく開発した発明を公の場で知らせてしまったという場合でも特許が取れるのかどうかということについて、公知の概念も踏まえて解説します。特許出願を検討される場合には、是非参考にしてください。

公知とは?重要なのは守秘義務!

公知とは?重要なのは守秘義務!

質問者
社内の内覧会で社員だけの参加だったら特許出願しても問題ありませんよね?その辺りの区切りがわからなくて・・・
酒谷弁理士
公知か公知でないかという部分ですね。参加している人に守秘義務があれば問題ありません。少し難しいので、詳しく説明しましょう。

公知とは、公然と知られた状態のことを指します。つまり、守秘義務のない人にその内容が知られたという場合です。例えば、新しい発明を開発した会社の社員などは、直接開発に関わっていない場合でも「守秘義務がある者」に該当します。

日本では、守秘義務のある者に知られても公知とは見なさないので、新製品を社内で発表する場合など守秘義務のある人に向けては発表する場合には、その発明は公知とはみなされず、特許法でいう新規性が喪失しません。

では、その対象が守秘義務のない人だった場合はどうでしょうか?例えば、新製品発表会に外部の人を招待している場合などは守秘義務のない人にも知らせることになります。

このような場合は、その発明は公知と見なされるので新規性を失うと言えるでしょう。

但し、例外もあります。それは、社外の人であっても守秘義務がある場合、すなわち、秘密保持契約(NDA)を結んでいる場合です。

自社技術の内容を第三者に秘密にする秘密保持契約を結んでおけば、発明を含む自社技術の内容を他社に開示した場合でも特許法上では公知にはなりません。ですから、このような場合には新規性が維持されます。

質問者
秘密保持契約(NDA)が重要なのですね!つまり、特許出願前には、守秘義務のない人に新しい発明を教えないようにしましょう!

では、秘密保持契約(NDA)とはどういったものでしょうか。詳しく解説していきましょう。

秘密保持契約(NDA)とは?

秘密保持契約(NDA)とは?

質問者
秘密保持契約(NDA)というのはどういうときに結ぶものですか?
酒谷弁理士
商品取引、共同研究などの交渉の前段階で、社内の秘密情報を相手側に開示する前にNDAを結びます。

企業同士が協力して業務に取り組む業務提携や出資を受ける際には業務に関することを話さなければなりません。しかし、別の会社だからと言って自社技術が外部に漏れるようなことがあっては困ります。

もちろん、これから特許出願しようとしているような新しく開発した発明について話す必要もあるでしょう。そんな時に企業間の取り決めとして秘密保持契約(NDA:Non-DisclosureAgreement)を結んでおくことが非常に重要です。

秘密保持契約とは、自社技術の内容が漏洩しないように、自社技術の内容を第三者に漏洩することを禁じることを目的とした契約です。

実は、秘密保持契約を結んでいない状態でその発明を他社に開示した場合でも、新規性喪失の例外の規定の適用を受けることが可能である場合もあります。

質問者
第三者への情報漏洩を防ぐ為にも秘密保持契約を結びましょう!

他社に開示した時から1年以内なら新規性喪失の例外!

守秘義務がない他社に発明を教えた場合は公知となるので、特許を取得する場合には新規性という点に影響があると前述しました。しかし、その発明を他社に開示した時から1年以内であれば、新規性喪失の例外の規定の適用を受けることが可能です。

新規性喪失の例外の規定に関しては別記事で詳しく解説しているので、下記リンクを参照してください。

関連記事

質問者 ある製品の特許を取得できないかと思っているのですが、ちょっと問題が・・・ 酒谷弁理士 どうしたんですか?新しいアイディアなら特許出願してみてはどうでしょう? 質問者 それが、既に[…]

製品の発表をした後でも特許取得は可能?新規性喪失の例外とは?

ですから、日本、米国、韓国では特許を取得できる可能性があります。但し、欧州、中国での特許出願においては原則、新規性喪失の例外の規定に適用を受けることができません。

質問者
発明を開示する場合には秘密保持契約を結んでおけば安心ですね!万一、守秘義務のない人に新しい発明を教えても、日本、米国、韓国なら特許が取得できる可能性もあるということですね!

新規性を喪失しないようにする対策

新規性が喪失しないようにする対策

質問者
新しい技術を開発しても、新規性が失われないようにしないといけないということですね?
酒谷弁理士
そうですね。やはり守秘義務というのが鍵になります。その意味でも他社への情報開示前に秘密保持契約(NDA)を結びましょう。

上記のように、秘密保持契約(NDA)は非常に重要な役割を果たします。

今後、あなたの職場で新しい技術やビジネスオペレーションを開発し、その発明を他社に開示する必要性が出て来る場合もあるかもしれません。また、何らかの事情があり、他社に新しい技術を紹介することも考えられます。

そのように情報開示の必要がある場合は、情報開示前に秘密保持契約(NDA)を結んでおきましょう。

重要なのは、原則、特許出願前に発明を教えてよいのは守秘義務がある人だけということです。守秘義務のある人を対象として話すぶんには、例え多くの人に向けて発表したとしても公知にはなりません。

しかし、中には意識の低い社員もいるので注意が必要です。発表の内容を聞いた社員が、その発明を守秘義務のない他社の者に話した場合、その発明は公知になり新規性を失ってしまいます。

ですから、社内全体で会社の利益を守るという意識を持って、守秘義務の重要性について理解してもらうことが重要です。

質問者
社内全体で守秘義務を守ること、必要な場合は前もって秘密保持契約(NDA)を結ぶことが大切ですね!
他社に発明の内容を話した!特許を取れるかどうかは守秘義務にあり!
最新情報をチェックしよう!
>スタートアップ向け「特許支援サービス」

スタートアップ向け「特許支援サービス」

ベンチャー・スタートアップが他社と戦える武器として使える特許の取得支援をしていますので、気軽にご連絡いただけると幸いです。ご要望も喜んで承っております!

CTR IMG