IoTとは
まず最初に、IoTについて解説していきます。
近年、物のインターネットいわゆるIoT(Internet of Things)が流行しています。あらゆる物がインターネットに接続されることによって、あらゆるものからデータが取得でき、取得したデータを用いて新たなサービスを展開することができます。
取得したデータが蓄積されるとビッグデータとなり、そのビッグデータをどのようにビジネスに活用するかも重要になっています。
最近の例であれば、電気ポットの使用データをインターネットで確認することで、遠方にいる人の安否が確認できる、なんてサービスも、物とインターネットを接続したIoTビジネスの代表例ですね。
こういったビジネスモデルは年々増加してきています。
それでは、特許では、そのようなIoTビジネスをどのように保護できるのでしょうか?以下、IoTビジネスにおいて特許で保護できる可能性があるものについて説明します。
IoTビジネスにおいて特許で保護できる可能性があるもの
アプリやプログラムと同じように、IoTに関しても、いろいろな観点から特許が保護できますが、この章では、次の5点について解説していきましょう。
- センサという物
- 通信方式
- データ処理
- ビッグデータ仲介のプラットフォーム
- ビッグデータの処理
センサという物
まず、物からデータを取得する際に、新たなセンサを開発した場合には、センサという物について特許で保護できる可能性があります。
通信方式
また、データ通信については、IoTに特化した通信方式について、新たに特許を取得できる可能性があります。
ただ、この通信方式については、標準化することによって、通信方式についてのパテントプールを形成し、パテントプール内の特許を一括でライセンスしていくというモデルが考えられます。
データ処理
データ収集後のサーバにおける処理について特許で保護できる可能性がありま す。
ビッグデータ仲介のプラットフォーム
IoTなどのデータについては、フォーマットが各社で異なると思われます。ですから、そのデータを管理するようなプラットフォームを構築して、ビッグデータの提供を仲介するプラットフォームビジネスが考えられます。
物から得られるデータについて、個人が特定されないようにデータが加工された後のデータについては、第三者に提供可能であるという契約をあらかじめ結んでおくことによって加工後のデータについて流通の対象にすることができます。
ビッグデータの処理
ビッグデータの処理について特許で保護できる可能性があります。
このようにIoTに関しては、様々な観点から特許で保護できる可能性があり、
- それぞれについて保護できないか検討する
- 1つではなく多面的に保護ができないかどうか検討する
といったプロセスが推奨されます。
不正競争防止法上の「限定提供データ」としてビッグデータを保護
IoTにおいて、ビッグデータに関してはいろいろな側面があります。その中で、ビッグデータそのものについては、特許の保護対象にならないと思われますが、不正競争防止法上の「限定提供データ」として保護を受けられる可能性があります。
ここで、限定提供データとは、「業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)」を指します(改正不正競争防止法2条7項)。
そして、
- 特定の者に提供するという限定提供性
- ID・パスワードによる認証、暗号化または 専用回線・専用アプリなどによって電磁的に管理されているという電磁的管理性
- データが相当量蓄積されているという相当蓄積性
の3つが要件が充足すれば、不正競争防止法の「限定提供データ」として保護を受けられます。
通常、ビッグデータの場合には相当量蓄積されるので、
- 特定の者に提供するという限定提供性
- ID・ パスワードによる認証、暗号化または専用回線・専用アプリなどによって電磁的に 管理されているという電磁的管理性
この2つを満たすことができれば、このビッグデータの 不正取得行為や不正使用行為などといった悪質性の高い行為に対して、民事訴訟法上の措置 (差止請求権、損害賠償請求権等)をとることができます。