新しいサービスを展開する場合、
- 商標出願
- 意匠登録出願
などについて検討する必要がありますね!
新しくアプリを開発・リリースする場合、特許以外にも気を付けておくことがいくつかあります。その中でも、「商標出願」や「意匠登録願」などは検討の余地があるでしょう。
ということで今回の記事は、
- アプリの名称の商標について
- アプリのアイコンの商標出願
- 画面デザインの意匠について
について詳しく解説していきましょう。
新しくアプリを開発・リリースする場合に、特許で注意する点については、別記事でまとめていますので、そちらも参考にしてください。
質問者 新しいスマホのアプリを開発予定なのですが、特許について詳しく教えていただけないでしょうか? 酒谷弁理士 まず結論から言えば、特許は取得することがおすすめです! 更に言うと、アプリの場合、サーバ(バ[…]
アプリの名称の商標について
商標権者は、登録商標を、
- 出所表示機能
- 自他商品識別機能
を発揮する形で使用(いわゆる商標的使用)する第三者に対して、商標権を行使することができます。ですから、商標を付されたアプリまたはゲームをインターネットを介して販売する場合、そのようなアプリまたはゲームの宣伝または広告を行う場合は商標的使用に該当します。
また、ゲームのタイトルについては、裁判では商標的使用が判断される傾向に あります(平成13年(ワ)第7078号 損害賠償請求事件)。このような場合には、アプリまたはゲームに用いる商標が他者の登録商標と同一または類似であれば、当該他者の商標権を侵害していることになります。
アプリの名称の商標クリアランス調査
このような事態を避けるために、アプリの名称については、他者の商標権を侵害していないか、アプリのリリース前にクリアランス調査する必要があります。
アプリの名称の商標出願
また、アプリのリリース後に、他者が、自社の商標と同一または類似の商標について、同一または類似の商品・サービスについて商標権を取得した場合、自社がそのアプリの名称を使用できなくなります。
そのような事態を避けるために、アプリのリリース前に、アプリの名称について商標出願をすべきです。
アプリまたはゲームに用いる商標が、他者の登録商標と同一または類似であれば、当該他者の商標権を侵害していることになります。ですから、名前を付ける際には気を付けてください。
アプリのアイコンの商標出願
例えば、NHNJapan株式会社は、LINEのアイコンを登録商標しています。
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務としては、第9類のダウンロード可能な文字メッセージ送受信用のスマートフォン用アプリケーションソフトウェアなど、第38類のスマートフォン用及びタブレット型電子計算機用アプリケーションを通じたテキストメッセージの通信などが指定されています。
アプリのアイコンの商標クリアランス調査
アプリのアイコンも、アプリの名称と同様に、他者の商標権を侵害していないか、 アプリのリリース前に調査する必要があります。
アプリのアイコンの商標出願
また、アプリのリリース後に、他者がそのアプリのアイコンと同一または類似の商標について、同一または類似の商品・サービスについて商標権を取得した場合、そのアプリのアイコンを使用できなくなる可能性が高いです。
そのような事態を避けるために、アプリのリリース前に、アプリのアイコンについて、商標出願をしましょう。
画面デザインの意匠について
画面デザインは、物品を指定することによって、意匠登録することができます。例えばヤフーは、アプリ画面について以下の画面デザインの意匠について登録してい ます(図2)。
左の図の実線が権利範囲を示し、右の図は参考図です。
意匠の説明には、
実線で 表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。
一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを 示す線である。
と記載されております。権利範囲として実線で描かれているのは、 グラウンドを俯瞰した図だけとなっています。ですから、この意匠権は第三者が侵害を回避しにくいものになっています。
意匠に係る物品は、「野球の実況情報提供機能付き電子計算機」です。
このような記載であれば、野球の実況情報提供機能を有するアプリがインストールされたスマートフォンが権利範囲に入ります。
このため、意匠権者は、類似の画面を表示する アプリの配信業者に対して、侵害の行為を組成したアプリの廃棄(意匠法37条2項)、 及び登録意匠に類似する意匠に係る物品の製造にのみ用いる物と見なし得るアプリの作成及び販売を差し止めることができます(意匠法38条1号)。
意匠に係る物品の説明には、以下のようにあります。
本物品は、野球の実況情報提供機能を備えた電子計算機である。
正面図に表された画像は、野球の実況情報提供機能を発揮できる状態にするための操作に用いられる画像である。
具体的には、正面図に示すとおり、表示部に野球場を模した形状(A領域)が配されており、A領域の上方及びA領域内にコ ンテンツ情報表示領域が配されている。使用状態を示す参考図に示すように、情報提供装置から提供された情報を受信すると、表示部の野球場を模した形状上に、出塁状況や打球の方向、守備位置等を表示すると共に、コンテンツ情報表示領域にコンテンツ情報(例えば、広告、写真、画像、映像、テキスト)を表示する。
また、コンテンツ情報表示領域を指やマウスポインタ等で触れると、表示したコンテンツ情報の 詳細情報画面へ遷移する。
コンテンツ情報表示領域は、現実の野球場に設置される看板等の位置に基づいて配されているため、使用者があたかも現実の野球場で看板を見るかのように、自然にコンテンツ情報に接することを可能とする。
画面デザインの登録意匠のクリアランス調査
画面デザインも、アプリの名前やアイコンと同様に、他社の画面デザインの登録意匠に抵触しないように、画面デザインを考えるべきです。
以前の意匠法では、GUI等の画像デザインの保護対象は、物品に記録された画像であることや物品に表示される画像であること等が要件とされていました。
しかし、意匠法の法改正がされ、物品に記録されていない画像(クラウド上の画像、ネットワークによって提供される画像など)、及び物品以外に表示される画像(壁や人体に投影される画像など)が、保護対象になりました。
従って、スマートフォンにダウンロードされたアプリに含まれてスマートフォンに表示される画像については、他社の画面デザインの登録意匠に抵触しないように、 画面デザインの登録意匠のクリアランス調査を実施する必要があります。
そして、他社の画面デザインの登録意匠に抵触しないように、画面デザインを設計する必要があります。
画面デザインの意匠出願
- 物品に記録されていない画像(クラウド上の画像、ネットワークによって提供される画像など)
- 物品以外に表示される画像(壁や人体に投影される画像など)
についても保護対象になると、改正後に取得された意匠権だけでなく、既に登録になっている意匠権についても同様に物品に記録されていない画像及び物品以外に表示される画像に対しても意匠権の効力が及ぶことになるでしょう。
ですから、画面デザインを考えた際には、
- スマートフォンに記録される
- スマートフォンに記録されない
に関わらず、出願を検討することが望ましいと言えます。
ユーザに訴求できる画面デザインの意匠権を取得することによって、他社が類似のゲームを開発するときに、意匠登録された画面デザインとは非類似の画面デザインにしなくてはいけなくなります。
このようにユーザに訴求できる画面デザインの意匠権を取得すれば、ユーザに訴求できる画面デザインのアプリ等を独占的に販売することができます。
それとともに、他社による自社の画面デザインの意匠権の取得可能性を低減し、自社が画面デザインを使用できなくなるリスクを低減することができます。
簡単にまとめると、新たなアプリを開発・リリースする場合、
- アプリの名称の商標
- アプリのアイコンの商標
- 画面デザインの意匠
について事前に他社の権利に抵触しないか調べておき、リリース前に商標出願、意匠出願をしておきましょう。