特に海外での事業展開を行っている場合には自社製品の模倣品が販売される可能性が高くなります。しかし、慌てずに対処して、市場から排除していきましょう。
今回は模倣品に対してどのようにすれば市場から排除することができるのか、その対処方法について詳しく掲載しています。是非参考にしてください。
模倣品対策に対する基本的な考え方
製品を販売し始めてから、ある程度の知名度が出て来ると模倣品が販売されることがあります。日本国内の他の企業がそうした模倣品を製造することがありますが、特に多いのが中国、台湾、韓国、東南アジアの新興国の企業が模倣品を製造して、日本に輸出して日本国内で販売したり海外で販売したりする場合です。
その製品が日本国内だけでの販売ということなら、それ程大きな問題にはならないことが多いです。しかし、海外展開をしている場合は、最初から模倣が起こり得るという前提で考えた方が良いでしょう。
では、模倣品にはどのように対処すべきでしょうか?
まずは状況を把握することです。状況を把握し、自社にとって最も良い対処方法を考えなければなりません。模倣品対策には100%の正解はありませんが、誤った方法を取ってしまうと大変なことになります。
ですから、現在の状況を判断してケースバイケースで対応しなければなりません。対処方法の大まかな流れとしては、以下のようになります。
- 事前にある程度の想定をする
- 現地の専門家やJETRO の相談窓口等に相談する
- 実際の事案に応じて臨機応変に対処していく
模倣品への対処方法
模倣品に対して排除を試みるのが基本的な対応になります。その上で、模倣が生じている状況及び相手企業に応じて、対策をしていく必要があります。対策例を表1にまとめたので参考にしてください。
状況例 | 状況概要 | 対策例 |
---|---|---|
1 | 模倣品が多く出回り、風評被害が懸念される。 模倣品販売相手が特定の企業だと認識できている。 |
保有している権利を主張し、専門家(海外であれば現地の専門家やJETRO等)と共に警告・訴訟などの手続きをして徹底的に排除する。 権利がない場合には、専門家と相談の上対応する。 |
2 | 模倣品販売相手が特定されているが、相手の製品品質も一定水準を満たし、風評被害が懸念されない。 | 製造委託先や代理店として提携することを検討する。例えば製品・品質が異なるラインナップとして使い分けることを検討する。 |
知的財産権の行使について
上記で対策を検討した結果、警告・訴訟などの手続きをして徹底的に排除するという方針に決定した場合について考えてみましょう。それぞれの場合について、どのような対処の流れになるのでしょうか。
自社が特許権を保有している場合
自社が特許権を保有していて、模倣品を市場から排除したいという場合には次のような手順となります。
- 模倣品が特許発明の技術的範囲におさまるかどうか検討
- 警告書を作成
- 法的手続きを検討
では、もう少し具体的に見ていきましょう。
模倣品が特許発明の技術的範囲におさまる?
自社の模倣品を排除するには、排除する為の理由が必要です。その為の理由として、自社が特許権を保有している場合に模倣品が特許発明の技術的範囲におさまることが重要となります。
但し、この検討は高い専門性が必要です。ですから、外部の専門家(弁理士または弁護士)に相談されることをお勧めします。
警告書を作成
模倣品が自社の特許権を侵害しているという確証が得られたら、権利行使に駒を進めましょう。その場合、模倣品の販売を停止するように警告する警告書を作成します。警告書は通常は内容証明郵便で発送します。
警告書では通常、以下のような内容を記載します。
- 自社が保有する特許権の情報(権利者、登録番号、登録日など)を提示
- 相手方の製造・販売行為を特定
- 当該行為が特許権侵害に該当することを記載
- 回答期限を記載
- 返答や対応がない場合には法的措置を取る旨を付言
警告書の作成に当たっては、外部の専門家(弁理士または弁護士)に相談されることをお勧めします。
法的手続きを検討
次のような場合には法的手続きの検討が必要です。
- 警告をしても相手が自社の要求に応じない場合
- 交渉したけれども合意に至らなかった場合
日本国内における裁判所への法的手続きとしては、一般的に次の2つがあります。
- 特許権侵害の仮処分申立て
- 本案訴訟(通常の訴訟)
法的手続きには、高い専門性が必要なため、外部の弁護士・弁理士に相談して検討しましょう。外国における裁判所への法的手続きは、国によって異なるので、その国の弁護士・弁理士に相談することをおすすめします。
なお、日本国内における法的手続きに関してはこちらの記事に詳しく記載しています。
質問者 自社製品に類似した他社製品が出回っていることがわかったのですが・・・ 酒谷弁理士 それは困りましたね。 質問者 取り締まるというか、どうにかして排除することはできないでしょうか?[…]
では続いて意匠権の場合について解説しましょう。
自社が意匠権を保有している場合
自社が意匠権を保有している場合にも、特許権の場合と同じような対処方法となります。
税関による差し止めを行う場合についても、高い専門性が必要なため外部の弁護士・弁理士に相談することをおすすめします。
では続いて商標権の場合について解説しましょう。
自社が商標権を保有している場合
自社が商標権を保有している場合には、下記の両方を満たしている場合にのみ、商標権の侵害に該当します。
- 相手の商標が自社登録商標と同一・類似である
- 相手の商品・サービスが登録商標の指定商品・役務と同一または類似である
但し、この判断は高い専門性が必要となりますので、外部の専門家(弁理士または弁護士)に相談されることをおすすめします。
検討の結果、模倣品が自社の商標権を侵害しているという確証が得られたら、模倣品販売相手に対して警告書を内容証明郵便で送付しましょう。
警告書の内容としては、以下の内容となります。
- 自社が保有する商標権の情報(権利者、登録番号、商標、指定商品・指定役務など)を提示
- 相手方の使用行為を特定
- 当該行為が商標権侵害に該当することを記載
- 商標の使用の停止を求める
- 在庫の廃棄を求める
- 回答期限を決めて記載
- 返答や対応がない場合には法的措置を取る旨を付言
また、警告書の作成に当たっては、外部の専門家(弁理士または弁護士)に相談されることをお勧めします。
警告をした後の相手方の反応が以下のような場合には、法的手続きを検討しましょう。
- 相手から回答が得られない
- 話し合いに応じない
- 交渉したけれども合意に至らない
日本の裁判所への法的手続きとしては、次の2つの方法があります。
- 商標権侵害の仮処分申立て
- 本案訴訟(通常の訴訟)
なお、法的手続きには高い専門性が必要なため、外部の弁護士・弁理士に相談して進めましょう。
税関による差し止めに関しても、高い専門性が必要なため、外部の弁護士・弁理士に相談することをお勧めします。