スモール企業が勝ち残るには、大企業と同じような考え方では難しいでしょう。そこで、今回はニッチな領域を基本として知財戦略や産学連携を用いて勝ち残る方法について解説しました。是非最後までご覧ください。
ニッチな領域を基本とする事業戦略
中小企業の中には、スタートアップのように急成長して短期間でのIPO(株式公開)を目指すような企業もあります。しかし、多くの中小企業は長期間かけて持続的に成長する技術開発型(いわゆるスモール企業)でしょう。
そのようなスモール企業が長く生き残る為には、ニッチな領域においてナンバーワンになることが生き抜くコツです。具体的なコツとしては、次の6つになります。
- 世界市場規模が1000億円以下
- 大手と競争しない商品を作る
- 特許を必ず押さえる
- 利益を高くしすぎない
- 寿命の短い商品は出さない
- 1市場でNo.1商品を1つ持ち複数の異なる市場でNo.1商品を持つ
世界市場規模が1000 億円以下
市場規模は大手が参入しない規模であることが望ましいと言えます。そして、大手が参入しない規模が、世界市場規模で1000億円以下の市場です。
大手と競争しない商品を作る
大手とはリソースが違うことは明白です。ですから、同じような戦略で戦っても負ける可能性が高いと言えるでしょう。
特許を必ず押さえる
他社の模倣防止及び技術優位性維持のためには、特許を取得することが必要です。
仮に他社から特許侵害で警告を受けた場合でも、特許を取得しておくことで逆に特許侵害で警告できます。クロスライセンス交渉に持ち込めるようにしておくことが重要でしょう。
また、特許を取得しておくことで、ライセンシングビジネスで収益化を目指す方法もあります。
利益を高くしすぎない
他の中小企業が参入するのを防ぐため、利益を高くしすぎないことも重要です。利益が高いということは他の中小企業から見れば実に美味しい市場だと思われます。その結果、後発で参入しても価格を自社よりも低くすれば製品が売れるという認識となるでしょう。
つまり、価格を低くしても利益が十分に得られるので、結果として競合が増え、価格競争になることが予測できます。
寿命の短い商品は出さない
寿命の短い(ライフサイクルの短い)商品での市場参入は良くありません。
寿命が短いということは、常に早いサイクルで商品を出し続けなければいけなくなります。しかし、スモール企業ということはマンパワーがありません。ですから、結果として疲弊することに繋がるでしょう。
1市場でNo.1商品を1つ持ち複数の異なる市場でNo.1商品を持つ
まずは1市場でNo.1商品を1つ持つことが重要となります。そして、異なる市場でも同様にNo.1商品を持つことを目指しましょう。
更に、別の市場でも同様に展開していくことで、柱が増え安定します。スモール企業であっても、売り上げ・知名度・信用度も上昇し、長期永続が可能になります。
コア技術を基軸とする知財戦略
最も重要なことは、必須特許を取得していることです。特にコア技術に関する必須特許を取得しておくことで、戦略の幅が拡がることになります。
コア技術を軸として様々な分野において、自社のコア技術を活用できるアプリケーションのアイデアを発想しましょう。
材料メーカの例として考えた場合、コア技術として何かの材料があったとします。そして、その材料を軸に、電気・機械・医・食・住・環境・エネルギー・美容などの様々な分野で活用することを検討しましょう。
その際には分野ごとの技術を産学連携にて大学から取り込み、自社のコア技術と融合させて商品を開発する方法も検討する必要があります。
コア技術に関する必須特許を取得していれば、他社から特許侵害の警告を受けたとしても、その必須特許でカウンターで特許侵害を警告することができます。そして、クロスライセンス交渉に持ち込むことも可能です。
これにより、自社が法外なライセンス料を一方的に払うことを避けられ、経営リスクを低減することができます。必須特許を持っていれば、他社からライセンス料収入を得ることも可能です。
また、スモール企業として考えた場合は生産を他社に委託するファブレス生産を検討することをおすすめします。また、それとともに、特許ライセンスして他社に製造販売を任せるビジネスを展開することも検討しましょう。
産学連携を成功させるには
スモール企業が製品開発を行う上でおすすめの方法は産学連携です。では、産学連携を成功させるには、どのようなことが必要でしょうか?
まずは大学の先生との有効なパートナーシップを作ることが必要です。そして、有効なパートナーシップを作るためには、以下の点が重要になります。
- 先生を見極める
- 自社でやりたいことをまず明確化する
- 頻繁なコミュニケーションの重要性
- 期間を区切る
先生を見極める
実は、大学の先生に申し込めばすぐに承諾してもらえるというものではありません。真剣に協力してくれる先生は少数だからです。
自社でやりたいことをまず明確化する
大学と共同開発する場合でも目的が曖昧であってはゴールにたどり着くことはできません。
ですから、最初にある程度の技術開発の方向性を自社でつくっておく必要があります。明確にやりたいことを先生に提示することが重要です。
また、実際に手を動かすのは、先生ではなく、先生の研究室の学生になります。ですから、学生が興味を持つように提案することも大切です。
頻繁なコミュニケーションの重要性
先生に任せきりにするのではなく、頻繁にコミュニケーションを取ることが重要です。
例えば、月に1、2回のミーティングを開き、進捗を管理するのが良いでしょう。早期に問題を発見することもできますし、問題に対して即座に対応することも可能です。
また、開発の方向性を定期的に確認し、必要な場合には軌道修正することも重要なポイントとなります。
期間を切る
商品化を見据えて、共同開発の期間を切ることが重要です。
期限を切って、その期限の時点で当初想定していたもの(例えば試作機など)ができていなければ、一旦共同開発を中止するという決断も必要です。
その際には、他の民間企業の方が技術開発が進んでいることもあるので、他の民間企業との共同研究を検討しましょう。
スモール企業が勝ち残る為には、常に商品化を早くすることを考えることが重要です。