自社の利益をより拡大したいというのは資本主義の大原則です。しかし、闇雲に生産したところで、利益を拡大することは難しいと言えます。そこで、今回は「オープン・クローズ戦略」というものについて解説しましょう。
成功事例も多いオープン・クローズ戦略を使って事業拡大をしてみてはいかがでしょうか。
オープン・クローズ戦略の概要
では、技術のオープン化について具体的に解説しましょう。技術のオープン化としては以下の手法があります。
- 標準化、パテントプール化
- 無償実施によるデファクトスタンダード化
- 特許のライセンス(有償/無償)
- 特許のクロスライセンス
では、技術のクローズ化についてはどうでしょうか。技術のクローズ化として、以下の手法があります。
- 秘匿化(ブラックホックス化)
- 知的財産権の独占実施
但し、知的財産権を取得することはその内容が公開されてしまうので、クローズを秘匿化という意味で使う場合には、クローズに知的財産権の独占実施が含まれません。
例えば、アップルやインテルはオープン・クローズ戦略を駆使して市場や自社利益を急速に拡大しました。
オープン・クローズ戦略の具体例
アップルのオープン・クローズ戦略
アップルがオープン化したことは、「スマートフォンの製造工程をEMS企業に開示」したことでした。これにより、アップルは工場をもたなくても、EMS企業がスマートフォンを大量に生産することができるようになったのです。
結果として、アップルのスマートフォンは全世界で販売できるようになり、米国だけではなく他の国の市場においてもシェアを獲得することに成功しました。
一方、アップルがクローズ化したものは、例えば次の3つがあります。
- タッチパネル技術及びそれに関する特許
- スマートフォンの外形のデザインを意匠権及びトレードドレスとして保護
- スマートフォンのオペレーティングシステム(iOS)
製品の出どころを識別し、他社の製品と自らを区別できる、製品の非機能的で物理的な細部およびデザインのこと。一般に、消費者にその製品の出所を表示する、製品あるいはその包装(建物のデザインすらも該当しうる)の視覚的な外観の特徴を示すものである。ランハム法43 条(a)により、製品のトレードドレスは米国特許商標局(USPTO) の公的な登録を受けなくとも保護されうる。
これらについてはアップルが独占的に実施しています。それにより、競合のスマートフォンメーカとの間で差別化を図ることに成功しました。
アメリカ合衆国では、製品のトレードドレスは一般の商標のように、連邦(制定)法であるランハム法により法的に保護されています。
例えば、以下のようなものは実際に保護可能なトレードドレスと判断されたことがあります。
- 子供服の陳列における生地の形、色、および配置
- 雑誌の表紙デザイン
- レストランチェーンの外観と装飾(様式)
- ワインショップにおける瓶の陳列方法
トレードドレスを保護することにより、そのトレードドレスを模倣した製品を排除すること、及び消費者が別の製品であると誤信して製品を購入することを防止することが意図されています。
インテルのオープン・クローズ戦略
インテルがオープン化したことは、PC 周辺機器(マザーボード)の製造技術の開示です。
アジア企業に開示したことで、アジアでマザーボードを大量に生産することができるようになりました。また、マザーボードの市場を拡大することに成功しています。
それだけではありません。インテルはMPUのインタフェースについても公開しています。ですから、全てのマザーボードメーカが、インテルのMPUを搭載できるようなりました。
インテルがクローズ化したことは、MPUの中身です。
MPUの中身を秘匿化したことにより、他社は高性能のMPUを開発することができませんでした。その結果として、インテルは高性能のMPUの価格をコントロールを可能にしたのです。
つまり、インテルはMPUの価格を高くしたままにすることができ、大きな利益を上げることに成功しました。
オープンにする対象
アップルとインテルの例からもわかるように、自社のコア技術については、クローズ(秘匿化または知的財産権の独占実施)することによって、他社の追従を許さないようにすることが大切です。
その上で、自社の利益を最大化するために、コア技術でない製造工程または製造技術のうちパートナー企業に対して開示する範囲を決めていくことが大切になります。
結果として、市場自体を大きくしたり、外国の市場に参入したりすることも可能になるでしょう。