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良い知財戦略はありませんか?
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今回はビジネスモデル特許を用いた知財戦略について取り上げます。ビジネスモデル特許とはどういうもので、どのような価値があるのかということを、事例を用いて詳しく解説します。是非最後までご覧ください。
ビジネスモデル特許とは
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ビジネスモデル特許は近年、非常に注目を浴びています。ビジネスモデル特許はビジネスモデル自体に特許が付与されるのではなく、下記にものに与えれる特許です。
- ビジネス方法において用いられるコンピュータシステム
- ビジネス方法において用いられるコンピュータプログラム
したがって、コンピュータシステムまたはプログラムを用いないようなビジネスモデルにおいては、基本的にビジネスモデル特許を取得することができません。
近年、ベンチャー企業・スタートアップのファイナンス(資金調達、M&A)やアライアンスの場合に、特許を取得していることが加点要素となっています。そのような背景もあり、IT系のベンチャー企業・スタートアップによるビジネスモデル特許の出願が増加しているということです。
また、特許は出願中であっても一定の牽制効果があり、その観点からもビジネスモデル特許の出願が推奨されます。具体的なメリットとしては、以下のようなものです。
- 他社による市場参入を思い止まらせる
- 他社による市場参入を遅らせる
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ビジネスモデル特許の価値
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コンピュータシステムの特許については、次のような意見を聞くことがあります。
- システムの構成を変更することにより容易に回避することができる
- 特許を取得してもビジネスに寄与しない
確かに容易に回避することができる特許、ビジネスに寄与しない特許もあります。ビジネスに寄与しないということについては、顧客に訴求するような機能についての特許ではないということでしょう。
では、上記を踏まえて、
- 回避困難な特許
- ユーザに対する訴求力がある特許
について考えてみましょう。
ある機能を実現する場合に回避困難な特許は絶大な価値がある
前述しましたが、コンピュータシステムの特許はシステムの構成を変更することにより容易に回避することができる場合があります。実は、回避されない特許を取得することは難しいのです。
しかし、不要な構成要件を含まないで必要最小限の構成要件で成立したビジネスモデル特許は回避することが困難です。ビジネスモデル特許の代表例であるAmazon のワンクリック特許は、以下の内容で成立していました。
Amazonのワンクリック特許US5960411の請求項1の和訳
「商品の注文を行う方法であって、クライアントシステムの制御下で、商品を識別する情報を表示するステップと、
単一アクションのみが実行されていることに応答して、商品の購入者の識別子と共に商品を注文する要求をサーバシステムに送信するステップと、
サーバシステムの単一アクション注文要素の制御下で、リクエストを受信するステップと、
受信した要求内の識別子によって識別される購入者に関して以前に記憶された追加情報を検索するステップと、
取得された追加情報を使用して、受信された要求内の識別子によって識別される購入者のために要求された商品を購入するための注文を生成するステップと、
生成された注文を履行して商品の購入を完了し、これにより、商品はショッピングカートの注文モデルを使用せずに注文されるステップと、を有する。」
このAmazonのワンクリック特許は、事前に保存されたクレジットカードなどの追加情報を用いて、
- 「単一アクションのみが実行されていることに応答して」
- 「商品を注文する要求」
を送信することにより、購入が完了するという内容で特許が成立していました。
この特許は、ワンクリックで商品を購入する際の最小限の処理しか規定しておらず、回避することは困難です。
このことは、当時のアップルコンピューター(現在のApple Inc.)がこの特許のライセンスを受けていたことからも裏付けられます。
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ユーザに対する訴求力がある機能を実現する特許は、ユーザの獲得に寄与するという観点から価値がある
Amazonは初期からワンクリック機能をはじめとするショッピングサイトの様々な機能を開発し、特許の取得を継続しています。ワンクリック機能はユーザへの訴求力がある機能です。なぜなら、ユーザが最小限の労力で商品を購入できる非常に便利な機能だからです。
Amazonは、初期のころからワンクリック特許をはじめとするユーザに対する訴求力がある機能を独占的に実装してきました。このことが、早い段階でユーザを獲得することに寄与しています。
それだけではありません。その利便性の高さから一度獲得したユーザが離れるのを防止できたのも、成功の要因だと思われます。
結果としてAmazonが現在のようなEコマースにおけるプラットフォーマーの地位の確立に特許が寄与したと考えられます。
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ビジネスモデル特許を用いた知財戦略
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ビジネスモデルを実現する際に必須の特許の取得を検討しよう
ビジネスモデルを実現する際に不可欠なコンピュータシステムの特許を必須特許といいます。新しいビジネスモデルを考案した場合、まずは必須特許の取得ができないか検討すべきでしょう。しかし、実際には必須特許を取得することは難しい場合があります。それはなぜでしょうか。
特許を取得するためには、新規性、進歩性の要件を満たさなければなりません。しかし、ビジネスモデルが新規であった場合、新規性の要件は満たしても、進歩性の要件を満たさない場合があるからです。
例えばAmazonのようなオンライン書店のビジネスモデルについて考えてみましょう。そのビジネスモデルが新規であったとしても、その時に既に他の商品のオンライン販売ビジネスがあったらどうでしょうか。
その場合、そのコンピュータシステムの違いが「扱う商品の違いだけ」になり、進歩性という要件を満たせません。ですから、特許を取得することはできないでしょう。
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次にユーザに対する訴求力がある機能に関する特許の取得を検討しよう
他社サービスに対して機能上の差別化を図り事業活動を優位に進めるには、コンピュータシステムの特許を取得していることが有効です。
但し、その場合のコンピュータシステムの特許はビジネスモデルにおいてユーザに対する訴求力がある機能を実装したものでなければなりません。
例えば、自社のビジネスモデルのコンピュータシステムに実装されるA~C機能があった場合について考えてみましょう。
A~C機能のうち、
- B機能をカバーする特許
- C機能をカバーする特許
を取得すれば、他社はB機能及びC機能を実装できなくなります。すなわち、機能Aのみしか実装することができなくなります。
この場合、B、C機能の利便性が高いものであり、ユーザに対する訴求力があるものだったとすれば、ユーザは利便性が高い自社サービスを選択するでしょう。
このように事業活動を優位に進めるために、ユーザに対する訴求力がある機能に関する特許を取得することが推奨されます。
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