

製品を販売するにあたり商標権を取得してブランド保護戦略を取ることは模倣品を排除するにはとても有効な方法です。しかし、ロゴなどの単一での商標権では保護戦略としては不十分かもしれません。
そこで、今回はルイ・ヴィトンのブランド保護戦略を例にして、どのように商標権を取得すべきかということについて詳しく解説しましょう。
ルイ・ヴィトンから学ぶブランド保護戦略


2018年11月7日、ルイ・ヴィトンは、ニューヨーク南部地区でi-Fe Apparel、Yongun Jungらに対して訴状を提出しました。ルイ・ヴィトンは、訴状において以下の主張をしています。
- 商標の偽造
- 商標の侵害
- 商標の希薄化等
原告であるルイ・ヴィトンの洋服と、被告の洋服は次の通りです(図1)。

出典:Louis Vuitton Malletier, S.A. v. i-Fe Apparel, et. al., 1:18-cv-10352 (SDNY)の訴状をもとに引用
ルイ・ヴィトンの登録商標
ルイ・ヴィトンがモノグラムデザインを長年にわたり使用しているのは公知となっています。実は、ルイ・ヴィトンはモノグラムデザインについて多面的に9つの登録商標を米国で取得しています。
ですから、ルイ・ヴィトンは上記の訴状において、単一の商標の侵害を主張しているのではなく、9つの別々に登録された商標の侵害を主張していることになります。
訴状では、以下のような侵害を主張しています。
- 4つの別々のモノグラム商標
- 2つの別々のLVデザイン商標
- 3つの別々のフラワーデザイン商標
▼図2 訴訟で用いられたルイ・ヴィトンの登録商標

出典:Louis Vuitton Malletier, S.A. v. i-Fe Apparel, et. al., 1:18-cv-10352 (SDNY)の訴状をもとに引用
注目すべきことに、図2に示す白地の2つのモノグラム商標でも2種類がある点です。
- 白地に中心がLVのデザインを有するモノグラムについての商標
- 白地に中心にフラワーのデザインを有するモノグラムについての商標

更に、モノグラムを構成するLVデザイン商標及びフラワーデザイン商標も取得しています。
このように、ルイ・ヴィトンは以下の2つそれぞれについて商標として登録しているので、以下のようにグループごとに侵害を主張できるのです。
- モノグラムという複雑なデザインに含まれる特徴部分
- このモノグラムを構成するデザイン要素(LVデザイン、フラワーデザイン)

また、上記の3つの商標グループすべてにおいて侵害が認められれば、1つの商標に対する侵害を主張した場合よりも、多くの損害賠償金が見込めます。

商標権を用いたブランド保護戦略


商標権を用いてブランドを保護するためには、ブランドのロゴまたはデザインについては以下のような商標登録を行うべきでしょう。
- ロゴ全体
- 特徴的な部分
- ブランドのロゴを構成するデザイン要素
ルイ・ヴィトンの例では、以下のようなものです。
- LVロゴ全体
- モノグラムデザイン商標
- モノグラムを構成するLVデザイン、フラワーデザイン
これにより、ライバル会社が自社のブランドのロゴを模倣して使用した場合であっても、次のように多面的に訴えることが可能となります。
- ブランドのロゴの商標の権利侵害
- 特徴的な部分の商標やデザイン要素の商標についても権利侵害
つまり、1つでも商標権侵害が認められれば、その商品の販売差し止めをすることができるので、模倣品を駆逐することができます。このように、1つのブランドデザインについて、多面的に商標を取得することによって、確実に模倣商品を駆逐することができます。
また、部分的に模倣されている場合であっても、商標権侵害を主張できるというメリットもあります。
